学窓余談
「学窓余談」第3巻 第1号 春陽堂 明治32年7月22日発行
自轉車
輪友閑人
自轉車は千八百六十二年始めて佛蘭西に行はれしが、當時の自轉車は前輪のみにて進行し甚だ不便利なりしより、其後改良に改良を加へ、英米等にて盛に之を用ふるに至れり。當時一般に行はるるものは安全自轉車と稱するものにして前後の両輪より成り、前輪は舵を取り、後輪は進行を計るに用ひらる。而して此二輪車にも種々の新形ありて輪の周圍を護謨にて包 み、又其護謨の内に空氣を含ませたるもあり。二輪車の外三輪車あれども、こは婦人又は初心者の乘用に適するのみにて遅々として興味少し。歐米には自轉車俱樂部ありて、中には婦人にして會長たる者もあり。我國にても駸々として日に流行を増しつつあれば、尙ほ他日機を見て詳細に記述することあるべし。
70頁
国会図書館所蔵資料
以下同じ
表紙
目次