2025年7月1日火曜日

スティーブンスの日本旅行記 パート2-13

 スティーブンスの日本旅行記 パート2-13

日本の神話でも解明されていないような他の奇妙な物は、少なくとも3フィート(91センチ)の長さの鼻を持ち、まったく不釣り合いな怪物的な人間の顔である。(註、天狗の顔)

雨の昼下がり、散歩をしていると、大声で暗唱する子供たちでいっぱいな大きな校舎の前を通った。下駄や和傘は、玄関先にある専用の棚にしまってある。大声で叫ぶ陽気さは、生徒が楽しみながら遊びを続けているように思える。野菜や果物を売る女性たちは、まるでノルマンディーの酪農家のように容姿端麗で、おしゃべりしたり、笑顔でお辞儀をしたりして「野菜売りごっこ」をしながら歩きまわる。私が骨董屋の品物を見るために少し立ち止まっている間、その店主は火鉢のそばに座り、煙草を吸いながら丁寧にお辞儀をし、甲冑を着た精悍な姿の武将の鎧を楽しそうに笑いながら指差していた。彼の行動には明らかに、私に何かを売りつけるつもりはまったくない。ただ、この鎧に私の注意を喚起したいだけである。何かを売ろうとしているわけではないが、もし求められれば、間違いなく彼の善良さから商売するであろう。 

2 台の小さな昔ながらの消防車が市庁舎の横に無造作に置かれている。火を消す遊びに飽きて、おもちゃを捨ててしまったように見える。私は海辺まで歩き回り、そこからホテルを見つけようとした。船頭たちは藤の花の防水コートを着てくつろいでいる。彼らは私を自分たちのボートに乗せて目的地まで連れて行きたいように望んでいるが、彼らの態度から見て、それは単なる楽しみのためであることがよくわかる。誰もが笑顔で都会的で、真剣そうに見えない。心配そうな顔も見られず、素晴らしい人たちである。彼らは他のどの国よりも幸せに生きるという感じである。托鉢僧でさえ、貧困を面白がっているようで、人生は単なるユーモアの実験であり、真剣に考えるに値しないものであるかのようだ。

昼には天気も晴れ、強い北風の中、下関に別れを告げた。

道路は瀬戸内海の海岸に沿って数マイル続いており、丘のふもとを曲がりくねって下って行く。


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天狗
小田原市板橋 量覚院秋葉寺
2023年8月12日撮影
サイクリングの途中に寄る