自轉車瓦版 第37号
昭和60年6月24日発行
★メーカー事始シリーズ NO.2 "BSA”
BSAという名前を知ったのは1965年頃である。あるスーパーマーケットの自転車置場で婦人用のBSAを見たのに始まる。始めのうちはその自転車を見て、なんと汚らしい地味な自転車と思った。しかし、まわりに置いてある自転車と比べると、なにか趣きが感じられた。サドルバックは、既に弾力はなく、後のマッドガードにへばりついている状態でかなり使い古された自転車であった。それから数年後、忘れかけていたBSAの思いがまたまた現われたのである。 そこで、なんとかこの自転車を手に入れようと、あちこちの自転車店を尋ね歩いた。遠いところは、電話で問い合わせBSAがあるかどうか確認した。しかし、すべて 無いという返事ばかりであった。それも当然である。 BSAは既に過去の自転車であったからだ。 ところが、浜松のシクロサロン戸塚という自転店にBSAがあるという情報を得た。そこで、はるばる 同店を尋ねた。「BSAがあるということを聴いて来ました。 もしあれば譲って欲しい」すると店主は「あれは売る訳には行かない私が長年親しんできた自転車だから」結果はある程度、予想されていたが、むなしさだけが残った。
今はBSAを欲しいという気持ちは全くなくなった。それは、戦前の国産車に興味の対象が移ってしまったからである。
BSAは、1692年、ウィリアムⅢ世の時代のイギリス・バーミンガムで鉄砲鍛治により創設されたのが、B・S・A (Birmingham Small Arms Company)の始まりであった。もっとも創立当時の呼名は、BSAではなく、この名称が正式に使われるようになるのは、1861年からのことである。(次号につづく)
註、The Birmingham Small Arms Company Limited、1861年、バーミンガムのGun Quarterにて創業。