2023年3月26日日曜日

スティーブンス佐賀に入る

 スティーブンス佐賀に入る

スティーブンスは長崎を出発して難所の日見峠をダルマ自転車で越え、その後、矢上~大村~嬉野~武雄~牛津を経てようやく佐賀に入る。

註、この画は佐賀の街をダルマ自転車で走るスティーブンスを描いている。人力車などが多く行きかい賑わいを見せている。番傘をさした女性、手前の子供は一見独楽を回しているように見えたが、よく見ると何か小動物のようなものを紐で繋いでいる。右端は下駄をはいた侍の様で二本差しを帯びている。1876年(明治9年)の廃刀令で軍人や警察官吏以外は所持できないはずだが、日本人の人物像を強く印象付けるためにあえてこの侍を描いたのであろうか。

令嬢を乗せて人力車を曳く車夫は大股でかけている。手で持つ梶棒も長く肩の上まで伸びている。この構図も画家の脚色であろう。

人力車が多くなる
「AROUND THE WORLD ON A BICYCLE」の挿絵


(一部抄訳)
佐賀に入ると平坦で連続した1マイル以上の走りやすい道になる。
何百人もの人々が住む村の大きな学校を過ぎると、青銅の大仏の前で子どもたちが大合唱していた。
佐賀で有名な通りは、やや起伏のある特徴的な杉並木の道である。
雄牛を先頭に荷車の農民に出合う。彼らは身分の低い人のようである。
日本の馬は、陽気で空想的な装身具に飾られている。
私と自転車を見ると後ろ足で立ち上がってキーキーと声をあげ、近づいてきて私を噛むようなしぐさをした。
このような百姓の一団が通り過ぎるときはいつも用心深くなる。

車夫の頑丈な手足に曳かれて、人力車がかなり頻繁に行きかうようになる。
半裸のような恰好で小走りする男たちは、二輪車の前にある梶棒をつかみ時速6マイルの速さで走って行く。
田舎の工場から街までをタイルを積んだ重い手押し車を曳く労働者もいる。
中国人ほどではないが、どの町や村でも重労働のほとんどはこのような人々により行われている。

ヨーロッパ商品の取り扱いに於いてコミカルな人の名前や商標及び完全な模倣が行われ、呆れた間違いが多く見受けられた。今日も昼食をとっている食堂で、ギンガム生地の傘を製造している多くの傘職人がいて、すべての傘に、会社名「ジョン・ダグラス、マンチェスター」とプリントしていた。普通のタバコにも「葉巻」というラベルが大胆に貼られていた。