これは富田源太郎の『英和商売用会話』(初版明治18年発行)の推奨文が書かれたページです。赤線で囲った部分は、自転車世界一周旅行者であるトーマス・スティーブンスの賛辞です。
次のように書いてあります。
This work will be found exceedingly compact and useful.
With this little volume at hand they can always make themselves understood, and thus manage their affairs without the assistance of an interpreter.
Thomas Stevens
Bicycle tourist
Dec 10th 1886
以下は私の拙訳ですが、
この本は非常にコンパクトで便利です。小さいながらもよく理解できます。通訳の助けを借りることなく仕事にも活用できます。
トーマス・スティーブンス
自転車旅行者
1886年12月10日
富田源太郎は、少年の頃から早熟な才能を発揮し、彼がまだ横浜商法学校在学中(17歳)にこの本を丸善から出版しました。学費稼ぎが目的であったようですが、それにしても英語力は抜群であったようです。
なぜ、トーマス・スティーブンスから本の推奨文をいただけたのでしょうか。彼が陸路、長崎から横浜に行く途中、恐らく日付から判断して、神戸でこの本を入手したと思われます。
横浜に着いたときは、真っ先に富田源太郎青年と会い、この本ついて語り、源太郎青年が通訳も買って出たのではないでしょうか。
この本は、その後も版を重ね、ちなみに上のコピーは、大正8年のもので第15版です。このことから見ても長年にわたりベストセラー本であったことが分かります。
資料提供:松島靖幸氏