2025年5月2日金曜日

スティーブンスの日本旅行記-④

 スティーブンスの日本旅行記-④

この比類なき人々は、自分たちの行動が 卑屈だと考える余地を一切与えない。日本人は 素晴らしい民族だ。彼らは誰よりも幸せそうに見え、いつも笑顔で人当たりがよく、礼儀正しく穏やかで、いつもお辞儀をして、相手に優しく接する。

魚介類の料理とご飯がたっぷり並んだ夕食の後、宿の主人は頭を下げ、日本人特有の 過剰な礼儀正しさで私のパスポートを受け取ろうとした。宿の主人 は、警察署でパスポートを受け取って検査してもらわなければならないと云った。

日本政府は、国の制度改善に努める中で、 様々な国の改革制度を導入してきた。 西欧諸国に委員を派遣し、教育、警察、陸軍、 海軍、郵政、司法制度などの制度を調査し、 報告させた。そして、様々な制度の中で最良と考えられたものが、日本の新たな出発と西洋文明 の導入のモデルとして選ばれた。 例えば、警察制度はフランス、司法制度は イギリス、学校制度はアメリカをモデル としている。こうした改善策を導入した日本人 は、物質的なものを模倣する際に見せるような 細心の注意を払って、そのモデルを忠実に守ろうとしているようである。おそらく、日本では他のどの国でも同様に、精緻な警察制度はほとんど 役に立たないだろう。しかし、フランスの素晴らしい警察制度を手本に選んだことで、今や欠点のない警察 制度を誇ることができる。

夜遅く、店主が二人の若い男を連れてきた。彼らは温かい酒を飲み過ぎて、既に幾分陽気だった。魅惑的な酒の香りは彼らの活力を増し、舌鋒を緩めると同時に、礼儀正しさにも影響を与えた。その結果、彼らは床に頭を下げ続け、微笑みながら質問する。最後にまた頭を下げ、階下へ引っ込む前に、立ち上がり、長崎で見られる有名な踊りをはじめた。優雅なステップ、滑るような動き、 揺らめきなどを、無言で芸者の滑稽な芝居として披露し、私を楽しませ てくれた。

店主は少しの間私のところにいて、酒を飲んでいた。

彼は若い客たちに酒をかなり気前よく振る舞い、頭を上下に振るという行動 で、私を楽しませてくれた。半時間ほどの間、彼は母国語で短い秘密の会話をしてくれましたが、全く理解できないと言われると、 すぐに頭を床に伏せてしまった。しかし、 それでも彼はすぐにまた私に話しかけ、頭を上下に振るのをやめなかった。 舌が自由に動き回り、私の無知さが分かってくると、会話は短い質問や、頭を上下 に振る動作を交えながら話した。

就寝時間になると、押し入れから布団が取り出され、床に 広げられる。硬くて寝心地の悪い木の枕が用意さ れ、頭のそばに炭火のストーブと大きな行燈が置かれる。服は畳んでしまい、頭を下げ、膝を床につけて 「おやすみ」の挨拶をする。これらはすべて、可愛らしい二人の仲居がやってくれた。彼女たちはおしゃべりをし、微笑み、お辞儀をし、まるで躾けられた二人の小さな子供が 夜のために人形や持ち物を片付けるようにそれぞれの仕事をこなした。

大村からは、立派な針葉樹の並木道があり、非常に良い道路が通っている。左手には大村湾が広がり、道路は 時折そのすぐ淵を通る。一箇所、 荒々しい岩の土手道から島にある寺院 が見えた。この小さな島は暗い松とギザ ギザの岩に覆われており、その中に寺院を建てている。中国人も 日本人も、礼拝や宗教施設の建設には、最も ロマンチックな場所を選ぶのが好きなようである。

日中は暖かく、夜中の激しい雨で道はところどころでぬかっているが、大部分は雨の影響を受けていないきれいな砂利道だ。長崎街道は丘陵地帯を越え、谷を下って、鉱泉と 温泉で有名な嬉野へと続く。途中、苔むした崖の斜面から小さな滝が流れ落ちる魅力的な小さな渓谷を通り過ぎていく。そこは、茅葺き屋根の小屋、寺院、森、そしてせせらぎの小川が点在する。

小川には、巧みな水流操作によって稼働する 無数の水車が設置されている。小さな水車小屋 には、米を入れた臼が置かれている。


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「アウティング」誌 
第12巻 4月~9月 1888年(合本版)
自転車世界一周 トーマス・スティーブンス著
(アウティング誌特派員)