赤自転車
「赤自転車と共に」2版 守川政美 著 1981年6月30日発行より
赤自転車と共に
昭和十五年八月半ば、一人の田舎出の若い男が、何か戸惑うようにして、札幌郵便局に入って来た。それから四十年、仕事より芸のない平凡な男だけに酒もタバコも飲まず、女も買わず、自分では精一杯やっていると考えているのだが、お世辞も言えず、人付き合いも悪いとあって、出世はもとより、たまたま表彰状を貰っても、間違いであったと言われたりもする。そんな力も欲もない男だけに、地位も名誉も別に欲しいと思ったことはない。
こんな気まぐれな男が、行き先もわからない汽車に乗っては見たが、途中下車し昭和二十年退職、翌二十一年再就職と慌てて乗る始末で、自分でも何処へ行くのやら、さっぱり分らない人生の旅路であった。 そんな男からみた思い出の一端を書き綴ってみた。
当時、札幌郵便局は大通西二丁目にあり、東西に約一町、南北に約半町の豪壮な建物で、大通公園に半分ほど飛び出たような格好で建っていた。前方に北海タイムス(現在の北海道新聞)南横は大通公園、東は白亜の殿堂豊平館、北は北一条を越えてすぐ、時計台があるという街のどまん中にあった。・・・
昭和十五年八月半ば、一人の田舎出の若い男が、何か戸惑うようにして、札幌郵便局に入って来た。それから四十年、仕事より芸のない平凡な男だけに酒もタバコも飲まず、女も買わず、自分では精一杯やっていると考えているのだが、お世辞も言えず、人付き合いも悪いとあって、出世はもとより、たまたま表彰状を貰っても、間違いであったと言われたりもする。そんな力も欲もない男だけに、地位も名誉も別に欲しいと思ったことはない。
こんな気まぐれな男が、行き先もわからない汽車に乗っては見たが、途中下車し昭和二十年退職、翌二十一年再就職と慌てて乗る始末で、自分でも何処へ行くのやら、さっぱり分らない人生の旅路であった。 そんな男からみた思い出の一端を書き綴ってみた。
当時、札幌郵便局は大通西二丁目にあり、東西に約一町、南北に約半町の豪壮な建物で、大通公園に半分ほど飛び出たような格好で建っていた。前方に北海タイムス(現在の北海道新聞)南横は大通公園、東は白亜の殿堂豊平館、北は北一条を越えてすぐ、時計台があるという街のどまん中にあった。・・・
挿絵 自転車とオート三輪
国会図書館所蔵資料
以下同じ
地図
奥付