自転車関係資料-138
前回の宇佐川正輝の続き、
この資料は、大正10年12月発行の校友会雑誌(山口県立萩中学校)第20号「世界自転車一周旅行家 宇佐川正輝氏講演要旨」である。
白人の日本人に対する人種差別、柔道の撃剣、日章旗の尊厳とその効用などが語られている。
世界一周自轉車旅行家宇佐川正輝氏講演要旨私はこれまで十万哩を自轉車で踏破しました。足は鉄のやうに堅い。それに柔道の素養があるから、甚だ気強く感じました。私は旅行中人種差別撤廃を三四やった。従来の日本旅行家が人種差別を受けたのは意気地がなかったからであります。例へば白人の劇場に日本人が百二十圓と云ふ大枚の金を出して、一等席のパスを買ってそれに入らうとする。そうすると白人の軽蔑的な視線は、悉の日本人の上に集る。すると意気地のない日本人にそれに堪へかねて、こそこそそこを逃げ出す。甚しきに至っては、正當の入場料を持つてゐるにも拘らず、案内者は日本人の一等席への入場を拒むのである。日本人は案内者にさへも侮蔑されて、一言でへこたれてしまふ。情ないではありませんか。一体人種差別に法律がありますか。 私の定めはあるが、世界的に日本人を排斥せねばならぬと言ふ法律はないのである。たゞ白人の横暴である。だから国旗の尊厳を知れる日本人は、これに辟易せぬのであります。勇気ある日本人は、何時でも之を撤廃して、国旗の尊厳にかかはる様なことを避けることが出来ます。之を撤廃することの出来ぬのは、第一外國へ物貨の仕入に行く自己本位の我利我利な商人連であります。
嘗て私は大正五年英領亜弗利加殖民地のケープタウンに行ったことがあります。こゝに出て来て四日目に、私は沖に日章旗を掲げた軍艦を一隻見た。その時の嬉しかったことといったら、私は飛び上って喜びました。早速泳いで行かねばならぬと思ったが、随分の距離があるから・・・