古い絵葉書-31
絵葉書、世界一周(自転車旅行)宇佐川政輝「國家に盡すの道は一筋」
この絵葉書はいまでも時々ヤフオクなどに数点登場する。冒険家の宇佐川政輝とはどのような人物であったのか、詳しいことは分からないが、断片的にこの絵葉書を含め、資料が出てくる。大正10年12月発行の校友会雑誌(山口県立萩中学校)第20号に「世界自転車一周旅行家 宇佐川正輝氏講演要旨」もその一つ。山口県出身で旧制萩中学校を卒業したと思われる。名前はこの正輝が正当か?
彼に関する資料が少ないので、とりあえずこの葉書に書かれた旅程の全文を載せる。
『國家に盡すの道は一筋』世界一週
感あり雄心勃々万里踏破の熱望世界の大勢を観察せんとの念已みがたく茲に決するあり単身故国出発ウラジオストックに上陸(時大正四年春)雪のシベリア氷結のバイカル突破露国に入る時に露国の戦雲急旅程意の如くならずハルピンに引返し満州支那西蔵蒙古を探検上海香港を経て南洋に出でスマトラジャワセレベスボルネオを一週シンガポールより馬来を英領ビルマに出印度カルカッタに入るコロンボ港出帆印度洋経由スエズ運河を越え地中海アレキサンドリアに上陸千九百十六年二月(即大正五年)エジプト首府カイロ市に出つ世界の長河ナイル河ピラミッド奇雅奇景を探り単身アフリカ洲に入る実に炎熱焼が如き極熱地を以て世界に知らるサハラ大砂漠は即是なり余が旅中に空前の冒険と一大惨事はアフリカである悲壮痛快毒蛇猛獣は前後に群り爪を磨き牙を鳴余が身辺を襲い又猛悪未開の土人は恐るべき毒矢ユミを以て余が背後に追ひ運命の風前に迫った事数回嗚呼故国を去るに万里の異郷然し余が携ふる日章旗は翻って実に絶倫の偉力を奮はしめた東部アフリカを一週しポートサイトに引返し地中海横断仏国マルセイユに渡り伊英各国を輪行再び南洋に来りマニラハワイ新領土抜踏帰朝此行程七万哩大正七年五月を再度日本出発シベリアを北進アラスカを経て米国大陸を三万哩破踏、日数五ヶ年、行程十万哩、帰朝後全国師団管下各聯隊講演の途に就き大正十年三月豪州に長崎を出発途中病にて引返す目下保養中健康回復再度出発近きにあり
世界一週(自転車旅行)宇佐川政輝