2023年3月29日水曜日

スティーブンス広島に

 スティーブンス広島に

下関を発ったスティーブンスは、右側に瀬戸内海を眺めながらダルマ自転車で走る。そして、広島に到着する。

註、下の画は漁村のある宿屋に寄ったスティーブンスである。手前の女性は卑屈にも土下座をして挨拶している。縁側の若い娘はスティーブンスにお茶の接待をしている。よく見ると火鉢と土瓶も描かれている。右に置いてある鉢植えはソテツのようである。

452頁
宿屋に寄る
「AROUND THE WORLD ON A BICYCLE」の挿絵


(一部抄訳)
宿屋からそう遠くないところに、イタリック体で書かれた「ヨーロッパ料理、亀屋」という看板が目を引く。
夕食時なのでビーフステーキとビールの絵を見て、その店に入る。
店の若い男性はホテルかと尋ねた。愛想笑いを浮かべていたが、私の言っていることが分からないようだった。

翌朝は霜が降り、低い雲が流れていて、これからの不安定な天候を暗示していた。しかし、私は旅を再開した。道はほとんど海岸に沿っており、砂浜の曲がりくねった道をたどることもあった。海岸近くの低地のほとんどは、湿原を埋め立てたように見え、何マイルにもわたり頑丈な堤防と岩の壁によって高波から保護されていた。海岸沿いには多くの漁村があり、最近の台風によって海水が内陸にまで押しよせ、道路も流されてしまった。何千人もの男女が損傷した箇所を麓近くにある花崗岩などを利用して復旧の作業をしていた。

この辺は何よりも魚が安く豊富で、漁村の宿屋の老婦人は、夕食に大きな魚料理を作ってくれた。彼女は普段から料理に使っている黒い悪臭のするソースをかけていたが、味は一流であった。この部屋には素晴らしい真鍮張りの仏壇があり偶像を崇拝していた。夕方、私は思い切ってこの仏壇の扉を開けて中をぞいてしまった。許しがたい好奇心を満たすためである。仏壇の中には装飾品と何か書いた紙切れがあり、その奥に仏像が安置されていた。手前には小さな磁器の器に米、酒、干物を供えていた。

翌朝もまた霜が降りていたが、道路状況はよかった。

9時頃には広島で軍隊の演習を見ることができた。演習は、低い土手と溝で囲まれた大きな広場で行われていた。好奇心旺盛な野次馬が、新兵の騎兵隊の演習を見物していた。ずんぐりした小さな馬に乗っていた。兵士が馬から投げ飛ばされるたびに、見物人はくすくすと笑っていた。兵士と馬の両方が小さいため、うまく機能しているようにも見えた。 騎兵隊の制服は青で、縁取りは黄色であった。・・・