探検世界 - 1
この「探検世界」にスヰフト商会の鈴木重行の投稿記事があったので紹介する。
「探検世界」6巻第1号 成功雑誌社 1908年7月5日発行
自轉車旅行の趣味
私は今年四十五歳になるが、市内に居ても、人力車や電車に乗る事は殆んどないといつても宜い。で体格は先づ誇るに足るだらうと自信して居る、輪上に在ては、二十歳三十歳の壮者と伍しても決して劣れをとるやうな事はない、私は理論上の体育説からばかりでなく、自己の経験から是非運動とし自轉車を大方諸子にすすめたいと思って居るが、利益をはなれた趣味! これは又乗輪の士にして始めて解せられる妙味である。寒い寒い風に耳朶のちぎられそうな中を走って、田舎の小さな宿やに何んかで、何もなくともあつい處にといった時の心地、花おもむろに散る春の夕、通りすがりの田舎道で車を杖によりかかりながら、暫し爛漫たる老櫻樹を見上げた時の心持、野良通の百姓を鈴の音に驚かして、疾風の如く秋の朝をかける時の心地よさ、個中の楽しみは到底筆紙に盡し得る處ではない。(スヰフト商会 鈴木重行)
表紙
国会図書館所蔵資料
自轉車旅行の趣味
スヰフト商会 鈴木重行
国会図書館所蔵資料
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