2020年8月13日木曜日

米国少年の自転車旅行

 米国少年の自転車旅行

1892年(明治25)9月20日付、信濃毎日新聞に「米国少年の自転車旅行」という見出しの記事がある。
以下のような内容である。

〇米国少年の自轉車旅行
米人シレル氏は本年一月其本国を自轉車にて出発し去る三月日本東京に着暫く滞在の上此頃信州內地の旅行を思立ち軽井沢に来遊し一昨々日旧軽井澤より携帯するところの自転車に乗り同日午後三時三十分上田に向け出発し同七時六分上田停車場に到着せり氏の自轉車は米国に於て二百弗內外の價值なる良好なるものなれども追分より小諸迄の道路非常にあしき為車輪に損傷を生じ修繕のため途中三十分間を空過したれば旧軽井沢より上田停車場迄即ち二十七里の里程を都合三時間と六分にて到着したり氏は本年二十歲未満の少年なるが尚此週間中に長野・松本其他本縣各地を旅行し名所舊跡を探り風色山水を尋ね其旅行記を編輯する由又同氏は目下上田松尾館に滞在中なるが聞く所によれば氏の自轉車は平地ならば一時間に十八哩を走るよしにてかって三河の豊橋より岡崎迄十里間を二時間二十分にて達し得たりと云う(下の新聞コピーをOCRで読み取る、誤字や脱字があると思う)

当初、この新聞記事は、フランク、レンツのことを記したものではないかと推量したが、どうもこの内容からは別人である。
先ず、米人シレルとあるが、これをレンツと読むには例え活字の誤字だとしてもありえない。
年齢は20歳未満の少年とあり、レンツは、日本に来た時は、25歳である。
来日した月もシレルは3月、レンツは11月と合わない。
いったいこの少年は何者なのか今のところ分からない。

疑問点を整理すると、

一、この少年のシレルとは何者か
一、この少年は一人で日本に来たのか
一、なぜ旅行先が軽井沢なのか(当時、軽井沢は外国人避暑地)
一、上田松尾館は現在もあるのか(今は営業していない)
一、日本だけの旅行なのか、世界一周ではないのか
一、その後、旅行記は出版されたのか、等

いろいろこのシレルについて調べているが、いまだに分からないというのが結論である。
せめてフルネームでのスペルが分かれば、ネット検索も可能であるのだが。
当然だが記事の断片から憶測するのも限度がある。

この少年の自転車旅行については、当時他の新聞や雑誌でも取り上げている。
内容は殆ど同じか、簡単に触れているだけである。

明治25年9月20日 信濃毎日新聞 米国少年の自転車旅行
明治25年9月21日 信濃毎日新聞 自転車旅行者
明治25年9月22日 讀賣新聞 信州に於ける米国少年の自転車旅行
明治25年10月3日 少年園 自転車旅行の少年

1892年(明治25)9月20日付、信濃毎日新聞