2011年4月20日水曜日

和田のビクター

 この自転車は明治21年に米国に留学していた和田義睦が持ち帰ったと伝えられるビクター号です。
 安全型のビクター号は、1887年(明治20年)にオバーマン・ホイール株式会社(1885-1900、マサチューセッツ州チコピーフォールス)が製造した自転車で、英国のローバーをベースに独特なスプリング・フォーク(ロッキングビーム)を取り付けた自転車でした。このビクターはおそらく1888年モデルではないかと思います。そうなると明治21年に持ち帰ったという話には信憑性があります。持ち帰るまでもなく、この年代のモデルに相違ないということです。
 福沢桃介も明治22年にビクター号を持ち帰っていますが、これも1888年製のモデルのようです。ただし、和田よりも少し新しいモデルと思います。和田との違いはサドルの取り付け位置やハンドルの形状、タイヤの種類などです。タイヤは和田の方がハードタイヤ(ソリッド)で福沢はクッションタイヤに見えます。これらのタイヤは、それぞれ空気入りタイヤが出回る以前のものです。空気入りタイヤが主流になると、ビクターの特徴であったスプリング・フォークの必要性もそれほど重要ではなくなりました。
 ビクターは当初、オーディナリー型自転車を製造していましたが、1887年にスプリング・フォークの安全型のモデルを開発しました。この時のフレーム構造は十字型(クロスフレーム)でした。