2023年6月16日金曜日

自転車と自轉車

 自転車と自轉車

自転車と自轉車の違いは?

一見どうでもよいと思われがちだが、当時の資料を重視するならやはり「自轉車」である。

日本自転車史研究会所の会報名も「自転車」ではなく「自轉車」と、当初から考えていた。これは当時の自転車専門雑誌である「自轉車」を意識して付けた名称であり、この雑誌にたいする敬意をも表している。

人の名前もそうだが、これは一つの固有名詞であり、実際にその漢字があるならば、それを使用すべきではないかと思っている。

陸船車と陸舩車も同様で、やはり「陸舩車」を使用したい。自転車史研究家の真船氏も”江戸中期の自転車「陸舩車」”日本自転車史研究会の会報「自轉車」第 42 号 1988 年(昭和63年)9月15日発行で、そのように表題を付けている。

それと、以前から気になっていることは「陸奔舟車」のことで、これもどこで変わったか「新製陸舟車(しんせいりくしゅうしゃ)」や「陸舟奔車(りくしゅうほんしゃ)」に変わっていて、この用語がいまでは主流になり、定着していることに違和感を覚える。

このブログのデジタルライブラリーにある大須賀和美氏の、”250年前、彦根藩士「人力自走車」創製の記録(1729年- 徳川将軍吉宗の代)”をもう一度よく読んで欲しい。

この資料の中に彦根藩士の平田時光が記録した「新製陸奔舟車之記」という資料があり、その中で「名は陸奔舟車の四字を以てす。(名以陸奔舟車四字)」とわざわざ書いている。

どこで変わったのか?その大須賀氏の資料の中に確かに「新製陸舟奔車之記」との表紙があり、先の「名は陸奔舟車の四字を以てす。(名以陸奔舟車四字)」と矛盾している。恐らくこの違いはこれらの当時の資料をまとめて綴じるときに誰かが「新製陸舟奔車之記」と表紙を書いたのであり、それが平田時光なのか、誰なのか判然としないが、わざわざ「名は陸奔舟車の四字を以てす。(名以陸奔舟車四字)」とした本人が表紙を書いたとはどうしても考えにくい。

やはり今後は、「新製陸舟車」や「陸舟奔車」ではなく「新製陸奔舟車」とすべきである。

自転車がいつのまにか差別用語の「チャリンコ」になり、いまでは「チャリ」が公共放送であるNHKも使用している。自転車を長年趣味としている人にとっては非常に不愉快である。

現代はネット社会でもあり、オープンAIのChatGPTやAI「Bard」などがますます利用され、原典の名称がいつのまにか変化し、それがネット上で拡散していく可能性があり、非常に危惧するところである。

既にネット上では「陸舟奔車」が定着してしまっている。これを変えるのはほぼ不可能に近いが、これから自転車の歴史について、研究する人や記述する人は是非「新製陸奔舟車」または「陸奔舟車」にして欲しい。