2026年1月4日日曜日

自轉車 第13号 - 2

 自轉車 第13号 - 2

雑誌「自轉車」 第13号 快進社 明治34年8月5日発行

以下は拾い読み、

梅津大尉自轉車談(其六)

半山生

自轉車と雨、是れ研究すべき問題の一つであろうと思ふ。善く素人より聞く事だが、自轉車は實に近來の利器であるが、雨には一歩も進めねであらうと云ふのである。成る程雨天の時は實際閉口すれど、道路泥濘ならざる限りは、濡れる覺悟を以てするときは、決して雨は恐るるに足らないものである。況して雨具の完全なるものを備えるに於ては、晴天の時と比べて、只少しく其労を増すのみであって、覆盆的大雨の中も、猶且つ進行するを得るの實力は、確かに具備して居ると余は確信するものである。夫れ然り、余は此確信を有するを以て、常に雨の爲めに行進を止めたる事もなく、過般研究的遠乗を試みたる時なども、折柄天候不順の時であつた爲め、多くは雨中の乘行を遂けてあった。聞く先頃来大旅行を試みてある那珂文學博士も、晴雨に拘はらず乘行を続け、豫定の日割を優に運びつつありて云ひ、又彼の先般来朝した、自轉車にて世界一周の獨逸人マックス、シューフラー氏の如きも、同じく常に雨中乘行を続けたと云ふ事である。故を以て余は世の張子黨連中に、今一と息の奮發を望まざるを得ないのであるが、玆に一つの大注意を要する事は、雨中乘用後の掃除方である。若し此掃除を怠るか、又は誤まる事あらんが、遂に車の保存期限を短縮するの恐れあるを以て、此事は能々注意せねばならぬ。即ち其掃除方は、乗行を終へたるときは直ちに泥土を拂い去り、水を滌きて之を洗い、然る後油布にて拭き、殊にタイヤは必らず取りはづしてリム共に掃除し、而して後ち之れを陰干しにするのである。萬一之れを日向干しにするか、又はタイヤを取り外ずさずに、あたりの泥を拂拭せし位に止むる事あらんか、遂にリムに狂いを来したり、リムとタイヤ間に侵入した水気の爲めに腐蝕を来たす事が、往々にしてある。現に先日相州久里浜に遠乗して、雨中を進行して掃除を怠った為に、右の損傷を見たものがあるので、・・・


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