自轉車 第6号 - 7
以下は興味ある記事を拾い読み。
最近米国学術雑誌に記載せられたる軍用自転車
(双輪商會寄稿)
今や自轉車は軍隊編成上欠く可らさる機關の一にして各國陸軍に大に其声価を認められ其發達の度の又極めて速かなりし事は實際驚くべき程なるが、數ヶ年以前になりて自轉車の未だ玩弄物視され其實用的運命を見る能はざりし時代にありては、是を軍事に使用して斯も著しき效果を収むべきものとは到底思も依らざりし所なりしが、近來漸く其名声を高め甞て一度は輕蔑の眼を以て之を度外視したる人士の今はなかなかに之を實戰に使用すべく説いて止まざるに至ては不思儀なる一現象とこそ云ふへけれ、實際自轉車は斥候或は傳令等の軍務に關しては他に比敵するの機関なしといふべし、盖し自轉車は軽快にして處理し易く、快速力を有して些少の音をも發せざる。馬上に於けるが如く敵の視線に触れ易き憂なき等の四点より之を論するに到底他に是と對等すべきものなきは明白なる事なり。近來英の陸軍に於ては種々試験の結果総員二千名よりなれる自轉車隊を編成せしが、これは斥侯傳令等の軍務に従事するにあらずして、今之を假に日本に譬へんに一個の敵軍横濱港より上陸なし鉄道を破砕しつつ、漸時東京へ進軍しつつある場合に際し、陸軍は先ず兼て準備したる此自轉車隊を發して神奈川附近に於て一時前進しつつある敵兵を喰止め、后本隊を發して之と替らしめなば、敵は其目的を達する事能はざるべしといふ軍務に備へられたりといへり、佛、獨、露等の諸強國の陸軍にして既に自轉車隊を編成せさるは殆どなきぼとの發達を見るに至りしが、其使用する自轉車は概ね外見は普通車の如く見ゆるも蝶つがひの作用によりて山岳等行通の不便なる路を進行するに際し・・・