明治初期のヴェロシペード
下の画像は明治初期のヴェロシペードと思われるが、正確な年代は分からない。或いは乗車している人物の頭髪や服装などから判断して明治中期だろうか。キャプションにも明治中頃とあるから明治15年から20年ごろかもしれない。ただし三輪車の形状としては1860年代のヴェロシペードを彷彿させる。
このヴェロシペードは欧州から輸入されたか、あるいはそれを日本の職人が見よう見まねで模造した足踏みの後輪駆動式三輪車であり、前方はやや小さな操舵車輪が1つ、後方に大きな駆動車輪が2つ配置されている。後輪が大きく座席を包み込むような独特の形状でメテオ型やラントーン型、或いは「提督の物語」に登場する三輪車にも似ている。
乗っている男性は、和服を纏い、マゲを結っているか明治初期の髪型をしている。文明開化の象徴である「西洋の新しい乗り物」と「伝統的な日本の格好」が融合した、この時代ならではの象徴的な光景である。
当時は「湿板(しっぱん)写真」と呼ばれる技術が主流で、撮影には数秒間完全に静止している必要があり、この三輪車が偶然通りかかったわけではなく、「新奇な乗り物に乗っている姿を記録する」という明確な目的を持って、カメラの前で静止してポーズを取っていたと考えられる。
キャプションに「東海道柏原の松並木と富士」(明治の中頃)とあるが、「柏原」はどのあたりか、蒲原のことであろうか。松並木の間から、雪をかぶった富士山が遠景に見えている。
269頁 左上掲
「日本世相百年史」 2009年10月20日
初版第1刷発行
東京日日新聞社・サン写真新聞社





