自転車関連資料-87
この資料は、雑誌「サイクル」1953年8月号である。
日本で發行された自転車雑誌の記事があったので紹介する。
日本で發行された自転車雑誌
◇…自転車が輸入されると共に、自転車の雑誌が発行されるようになった。これ等の雑誌は昭和の始めには殆ど姿を見なくなり、新聞が発行される様になった。
日本にも沢山来ている英国の週間雑誌、「サイクリング」が発刊五十年、又アメリカで発行されている「アメリカンサイクリスト」が七十五年の歴史を持つて居ると云うが、日本の自転車雑誌も、発行以来のものが続いて居れば、六十年位の歴史を持つ事になるが、昭和の始め頃には殆んど雑誌は姿を消し、新聞に代る時代となった。
◇…日本で始めて発行されたのは、「輪友」でこれは双輪商会の吉田真太郎氏が自ら編集して、第一号が明治三十一年の一月に発行されている。次で「自転車雑誌」と云うのが発行された。これは東宮和歌丸氏の主宰するもので、東宮氏と云うのは石川商会のかくれた資本家であった。
◇…「双輪」は愛輪家の趣味の言及が目的で、業者の宣伝機関で無く、従ってその記事もそれに従って編集してある。当時文筆の大家であった、矢野龍渓氏が相談役となり、速記者を頼んで、当時の愛輪家、後藤新平、広沢金次郎伯、佐々木文一博士、那珂通世博士、松本幸四郎、市川左団次、常陸山、大刀山等を訪問して毎号その感想を載せ、読者の感興をそそったものである。
◇…この「輪友」は双輪商会が大阪へ支店を出すようになってから、発行が大阪に移り、小田垣哲次郎氏が引き受け、「大阪輪友雑誌」と称して居たが、小田垣氏の没後、有田氏が継承したものである。
又「自転車雑誌」の方は東宮氏の後を、佐藤半山氏が引き継ぎ、又双輪の編集を手伝って居た、清水 卓氏は、明治三十四年に独立して、「輪業世界」を出した。
◇…名古屋に、子安と云う人の発行した「愛輪時報」というのがあり。又、奥田喜明氏が「名古屋輪界」を発行した。奥田氏は現在八十余才の高齢であるが、「名古屋輪界」は新聞型にはなったが、今日でも続いて居る。金沢では牧野と云う人が「愛輸」を発行し又東京で井野氏が「輪界」を発行していたが、之等の雑誌は、いずれも主宰者の死亡、戦時言論統制によつて、いずれも姿を没するに至った事は淋しい。
註、参考までに以前調査した明治期発行の自転車雑誌一覧を載せる。日本で最初に発行された雑誌は「輪友」ではなく、倶楽部誌の日本輪友会発行「自転車」であった。
明治期発行の自転車雑誌
雑誌名 発行所 発行年
1、自転車 日本輪友会 明治26年~5号で廃刊
2、自転車 快進社 明治35年8月~大正?
3、輪友 輪友社 明治34年10月~大正?
4、輪界 輪界雑誌社 明治41年9月~明治45年?
5、猟輪雑誌 大阪、猟輪倶楽部 明治35年9月~明治35年12月
6、三友雑誌 自転車銃猟写真の友 明治36年1月~明治40年?
7、関西自転車 大阪 創刊年月日など不明
8、自転車世界 大阪、自転車世界社 明治35年10月~明治35年12月
9、愛輪時報 名古屋 創刊年月日など不明
10、清輪 清輪時報社 明治38年~?
11、信越輪界 信越輪界 明治43年?
12、自転車 日本輪友会 明治27年2月~5号まで発行
13、愛輪 金沢愛輪クラブ 明治36年10月~?
14、周防愛輪月報 周防愛輪同志会 明治37年6月~?
15、日米タイムス 日米商店 明治42年6月~?
それにしても明治時代に既にこれだけの自転車専門雑誌が発行されていたとは驚きである。