陸奔舟車関連 - 6
「乗合自動車」 加藤盛次郎 著 工業図書㈱ 昭和11年4月23日発行
この本の9頁に陸奔舟車関連の記事あり、
3. 我が國に於ける自動車の沿革
我が國に於ける自動車に関する資料は極めて少い様であるが、滋賀縣彥根町史編纂中、昭和8年5月、同町長松院境内の鐵塔内より徳川時代の天文曆學者彥根藩士平石久平治の古文書を掘出し研究中のところ、計らずも最近に至り平石久平治の發明せる新製船奔車と云ふ乗合の自動車の如き木製乘用車の設計図が發見せられた。之に依ると桐材で造った長さ9尺の小船型、前後と左右に車輪を附けた四輪車で、ハンドルを持ってカラクリを運轉すれば音もなく走り出し、速さは一刻7哩(時速約14㎞)にして、享保18年と記され、今より凡そ200年前に當り、ニコラ=ジョゼフ・キュニョーの蒸汽自動車や、ジェームス・ワットの蒸汽機關が生れよるよりも以前の事であるが、遺憾ながら、カラクリの構造は秘密として發表せられず、當時に於ても此の發明は確かに世人を驚かせ便利なるものであったらうが、流行しなかつた處を見ると、乗用を禁止されたのではないかとも思はれる。
註、新製船奔車は、陸奔舟車のこと。平石久平次は平石久平治ともあり、資料によりまちまちである。
9頁
「乗合自動車」昭和11年4月23日発行
国会図書館所蔵資料