2024年4月4日木曜日

イタリアンバイシクル展

 イタリアンバイシクル展

この「イタリアンバイシクル展」は、1998年3月1日~1999年2月14日までシマノ自転車博物館で開催された。

資料を整理していたら大きなポスターが出てきた。

下の写真がそれである。

「イタリアンバイシクル展」
ポスター A1サイズ大
提供:シマノ自転車博物館
以下同じ




①DEI (デイ) 1935年頃 11.5kg
60年以上前に作られたレース車。車輪は木製のリムである。
現在ではこのメーカーはなくなっていて詳しいことは分からないが、イタリアのロードレーサーの歴史を見る上で大変貴重な自転車である。
変速機は1920年代に開発されたビットリア社のジロデフランシア (ツールドフランスの意味)というモデルがついているが、これを変速するときは一度自転車から降りて変速し、チェーンのたるみをレバー操作でとってから再び走り出したと思われる。
後車輪の左右に3枚ずつのギアがついているので、6段のギア変速が可能である。

②LEGNANO (レニヤーノ) 1951年 重:10.5kg
色は黄緑色で、レニャーノのイメージカラーを表している。
変速機はカンパニョロ社が初めて作ったモデルで、2本レバーのタイプが1951年に1本レバーのものに改良されてパリ・ルーベという名前になった。 これはパリの荒れた石畳の道のコースで行われるレースから来ている。
こうした悪い道路でも使える変速機を目指して作られたと思われる。
この変速機を操作するレバーは、まず後車輪の固定をレバー操作でゆるめペダルを逆転させながら変速レバーで変速して、のちチェーンのたるみをとって再び後車輪を固定するものである。

③BIANCHI(ビアンキ) 1953年頃 11.1kg
1885年にスタートしたビアンキはこの時代から現在に至るまで大メーカーでありながらレース活動に取り組んできた有名ブランドである。
この当時イタリアで最も人気のあった、ファウスト・コッピーが1953年に世界選手権のロードレースで優勝したことを記念して発売した記念モデルである。部品はカンパニョロ社が開発したパンタグラフ式変速機で 、この形が現在の変速機の構造としてデビューした初めてのものである。 いいかえればカンパニョロ社がレース界に1960~1980年で圧倒的シュアをこめたのはこの形を作り出したからである。

④ CINELLI (チネリ) 1969年 10.1kg
創業者のチーノ・チネリは1936年から1944年までプロレーサーとして活躍した後、1845年にミラノでフレームとハンドル・ステムの生産をはじめた。機能を追求して作られた製品は美しいフォルムを持ち、世界各国の選手から注文を受けた。東京オリンピックを控え、日本代表チームもチネリ社のレース車を購入したことで有名である。変速機はカンパニョロ社の第3世代のレコードシリーズがついている。カンパニョロ社は1960年のローマオリンピックを境に自転車レース部品の主流になったと言われる。このころに発売したクランクセットは5本の長いアームがついたもので、レース用クランクの代表的な形となってゆく。

⑤ DE ROSA(デローザ) 1974年 重さ: 9.2kg
デローザは12歳で自転車製作の工房に入り、18歳のときに自分の名前の自転車製作を開始した。1958年にプロチームのメカニックになり、プロレースの世界に入った。デローザはミラノ郊外の小さな工房だったが、1973年秋からスーパースター、エディー・メルクス選手が乗り始めて注目された。本当にレースだけを考えて作られたフレームは優れた性能を持ち、人気が現在でも続いている。 カンパニョロ社と親密で、レコードシリーズを軽合金化したヌーボレコードシリーズの変速機を装着しており、当時流行し始めた部品へのブランドの彫刻がほどこされている。

⑥ ALAN (アラン) 1973年 重さ:9.3kg
アルミで作られた自転車は古くからあったが、1972年に量産型レース車として生産した最初のメーカーはアラン社である。軽くてサビにくい材質のため、現在でもその美しさを保っている。アラン社は新しい素材を用いる事に意欲的で1986年にカーボンフレームを発表し大きな話題となった。
部品は堺のシマノが初めて本格的レース用部品としてこの年発売した、デュラエースシリーズが装着されている。この年デュラエースシリーズはヨーロッパのプロレースにデビューし、自転車の本場ヨーロッパへ日本部品として初めて本格的に進出した。

⑦ GIOS(ジオス) 1978年 重さ: 9.0kg
ジオスは1936年のベルリンオリンピックに出場した名選手で、ヘッドマークに五輪のマークが入っているのはその由来による。1948年よりレース用自転車の製作を開始し、1973年プロレースで大活躍したブルック リンチームに供給して有名になった。日本では1997年に阪神大震災の被災地の現状と支援を訴えて日本一周した矢崎兄弟が使用した自転車として有名である。部品はカンパニョロのスーパーレコードで、本格的にチタンを自転車部品に最初に採用したものである。シマノは部品に新しい機能を追求したのに対し逆に部品の一部をチタン化して軽量化するという伝統的手法をとった点が対照的である。

⑧ ROSSIN (ロッシン) 1978年 重さ: 8.8kg
ロッシンは15歳で自転車店で働きアマチュアレースで活躍した後、ミラノへ出て27歳のときにコルナゴでフレーム職人として働き、エディー・メルクスのフレームも担当していた。1974年に31歳で独立してフレーム製作を始めプロチーム等でも使われ、中規模のメーカーに成長したミラノ郊外の工房である。 部品はシマノの第2世代のデュラエースEXシリーズが装着されている。
このコンボには薄いクランクとペダルの踏む位置を下げたペダルがついており、このEXシリーズの後に発売されたデュラエースAX (エアロ) シリーズの原型となった。

⑨ MOTTA (モッタ) 1990年 重さ: 9.8kg
ジャンニ・モッタは、1964年から1974年までプロレーサーとして活躍し、1966年のイタリア一周レースで 優勝した選手だったが、引退後レース用自転車製作をはじめた。この自転車の特徴の1つは大胆なカラーリングで、 アメリカチームが1978年頃イタリア一周レースに、参加したときに供給したものなので、アメリカ国旗をモチーフにしている。部品はカンパニョロ社の空気抵抗を意識したと思われるCレコードと呼ばれるシリーズ を採用している。特にブレーキの形状はシマノが1980年に発表したデュラエースAXシリーズの影響を受けていると思われる。

⑩ MOSER (モゼール) 1991年  重さ:10.6kg
モゼールは、1970年代後半から80年代中頃世界選手権或いはイタリア一周レースで優勝したほかアワーレコード(1時間に走れる距離を競うレース)で何度も世界記録を出すなど活躍したイタリアのスーパースターであったが、1978年から兄弟と自転車生産をはじめた。部品はシマノが1984年に発表した第4世代のデュラ エースの改良型が装着されている。この年シマノは、世界で初めて変速操作装置をブレーキレバーの中に内蔵させたシステムを完成した。シマノの機能を追及した傑作で、この形がレース部品の標準となった。この自転車は1990年にイタリア一周レースで優勝し、この年世界選手権で優勝したジャンニ・ブーニョ選手が使用したものである。

⑪ FONDRIEST (フォンドリスト) 1996年 重さ: 9.4kg
フォンドリストは1988年に世界選手権で優勝した現役レーサーである。
その名を冠したレーサーで、新しいアイデアが盛り込まれている。伝統的なスチールのフレームではなく太いアルミチューブが使用され、フレームの塗装も全く新しい考えのデザインになっている。部品はカンパニョロ社の車輪も含む新型レコードが装着されている。カンパニョロ社の新製品としては、シマノの機能に追従して変速装置内蔵ブレーキレバーや後変速機の構造を採用しているので、形状は似たものになった。しかし造形デザインと仕上げはイタリアンデザインが発揮されている。

⑫ COLNAGO(コルナゴ) 1997年 重さ: 8.9kg
コルナゴは13歳の時に自転車工房のグローリアで働きはじめ、1954年から自分の工房で自転車の製作に乗り出した。まずプロチームのメカニックとして働き、その所属チームのスーパースター、エディー・メルク スのフレームを供給し、ハンドメイドでスタートしながら大きくなった工房である。
自動車メーカーフェラーリと共同でカーボンモノコックのフレームを製作するなど新しい試みを追求している。 この自転車に装着されているシマノのデュラエース最新型部品は、アトランタオリンピックで男子ロードレースの1位~12位を独占し、センセーショナルなデビューをした。
この自転車はオランダのプロチームラボバンクチームのために製作された。

註、ウンベルト・デイ( Umberto Dei)
ウンベルト・デイは、1896 年に自転車メーカーとしてスタートし、その後イタリアの自転車市場では有名な企業となった。

デイのブランドであった「ミラノ-サンレモ」は、1925 年から 1940 年までの最高級ロードモデル。
主な仕様は、
クランクセット:「U. Dei Milano」の刻印
ステム/バー: スチール
サドル:「グリニッジ」
ペダル: クイルスタイル
ギア: ヴィットリア マルゲリータ「ジロ デ フランシア」チェーンステー クラッパー付き
ブレーキ: ユニバーサル、スチール
ホイールセット: U. Dei ハブ (両面リア) ウッドリム付き、700c
チェーンホイールはマジストローニのパターンで、クランクもマジストローニ製。