2024年5月9日木曜日

平石久平次関連 - 7

 平石久平次関連 - 7

「現代滋賀県人物史」 乾巻 施善次郎 編 暲竜社 大正8年10月発行

ミルクホール西洋料理業

平石佐源次君

橫濱市尾上町五丁目七十五番地 電話四六六二番

維新前後武家凋落の時代に人となれるもの、多くは苦楚慘澹の間に世路の艱險を踏破したるなり、 四民平等の潮流は滔々として其脚下を洗ふも、彼等は尙未だ格式の舊夢より醒めやらず、世祿の恩を離れては、恰も轍鮒の如く、自ら世に處し生を支ふる所以を知らざりしが、世と共に漸く醒めて、漸次社會上の優者を出すに至れり、平石君の如きも亦其一人なり、時代の端境期に生れ、幼にして家國の喪廢に遇ひ、轉々定りなき運命の一路に流轉して、尙能く今日の獨立を成せる、其意志の鞏固なりし、以て想見すべきなり。

君は明治元年二月十五日、彦根町字丸野木六番屋敷に生る、家元と井伊家の舊臣にして、其高祖を平石時光と云ひ、實に井伊直定の従兄なり、氏碩學にして算數暦術に精しく亦古今の事歴に通じ、著述する處多し、而して畏き邊りに御嘉納の栄を負ふものありと云ふ、氏明和八年七十六歳にして卒す、次を重實と云い、故人の遺著を愛蔵し彦根長松院境内に鐵塔を建立して此に收む、大正三年此塔を開くや、天文曆算書、馬術、軍學、日記、醫書、其他の雑書五百餘部を發見せりと云ふ、其學識の深遠亦知るべし、而して其著や目下學又は天文臺等に保管せらる。 ・・・


748、749頁
「現代滋賀県人物史」 乾巻
国会図書館所蔵資料