2009年2月12日木曜日

レンツの本

 アマゾンでレンツの本を検索したところ、発行予定は9月なのですが、本の写真がすでに載っていました。表紙の写真を見ると、自転車に乗っているレンツが写っています。よく見ると自転車はビクターです。特徴あるフロントフォークですぐに分かります。 
 ビクターは、1891年にオバーマン・ホイール株式会社(マサチューセッツ州チコピーフォールス)が製造した自転車で、英国のローバーをベースに独特なスプリング・フォーク(ロッキングビーム)を取り付けた特徴ある自転車です。このスプリング・フォークは、装着されたタイヤがソリットタイヤやクッションタイヤでも未舗装の路面からの衝撃を吸収し、乗り心地をよくしています。 
 日本では、梶野自転車店の新聞広告(明治26年2月26日、毎日)にこの自転車のイラストが掲載されています。恐らくこの時期に梶野でも販売していたものと思われます。 
 明治26年頃に福沢桃介や和田義睦が乗っていたことは、当時の写真が残っていますので分かります。福沢桃介は、直接アメリカからビクターを持ち帰ったということですが、彼が留学していた期間は1887年から1889年ですので、まだこの時期ビクターは誕生していません。ですから彼も、国内で輸入されたものを買ったと推定されます。1892年(明治25年)11月にレンツは自転車による世界一周旅行で、日本にも立ち寄っていますから、その時に彼らもビクターを見たことでしょう。特に和田義睦は、明治19年という早い時期から自転車に熱中していました。 
 日本でのビクターの名を知らしめるのに、このレンツの来日が一役かったものと思われます。これはちょうどトーマス・スティーブンスが1886年に東海道を走ったことにより、徳川慶喜を刺激したように、何らかの影響を日本人に与えたことでしょう。