これは特許出願の図面です。日付は、1906年(明治39)5月3日とあります。分解はフレームパイプ接合部にボルトのようなネジが切ってあり、これにより脱着します。
折畳自転車は、最近でもいろいろな形状のものがたくさん製造されています。折畳の方法も千差万別です。先に紹介したモールトンのAM2もその一つです。
私が持っている折畳自転車は、ブロンプトンとポーターシルクです。ブロンプトンはイギリスのアンドリュー・リッチー氏が1991年頃に開発した自転車です。ポーターシルクは1950年(昭和25)に志村精機が製作したロード・パピー号を、その後片倉シルクが引き継ぎ量産された自転車です。
折畳自転車の発想はどこからきたのでしょうか。一つには携行を目的としたもので、コンパクトにたたんでバックに収納し持ち運ぶことです。現在では車に収納したり、部屋の片隅に保管することでしょう。
それから軍隊が山岳地帯の行軍などに背負ったり、パラシュート部隊が飛び降りるときなどに折畳はかかせません。恐らく最初に開発したのは陸軍ではないでしょうか。イギリスのBSAやフランスのプジョーなどの軍用自転車が知られています。
プジョーの軍用折畳自転車は、フランス陸軍第87歩兵連隊のジェラール大尉が1895年(明治28)に考案したと伝えられています。その後、第二次世界大戦でイギリス陸軍空挺部隊によってBSA社のパラバイクと呼ばれた折畳自転車も登場しました。
日本の軍隊でも明治30年頃にジェラール考案の自転車が利用されたようで、当時の写真も残っています。また、1897年(明治30)1月9日付けの東京朝日新聞にも仏国自転車兵中隊の記事が載っていて、ジェラール大尉の名が出てきます。軍隊での利用形態は、当初伝令や斥候などに利用されましたが、後には自転車部隊という一つの軍隊組織が編制されました。太平洋戦争時にフィリピンのマニラ近郊やマレー半島の攻略作戦で活躍した銀輪部隊は有名です。