日本力行会の会員である大久保素公(25才)君は、1914年(大正3)2月20日に自転車世界一周の旅に出発しました。
当日は午前9時から皇居前広場で二重橋を拝しながら、日本力行会のメンバーやその他の関係者、それに野次馬を含めた大勢の人々が集まり、壮行会が行われました。大久保青年は集まった聴衆を前に、自転車世界一周の抱負と決意表明をいたしました。その後、主催者を代表して会長から旅の無事と成功を祈念する挨拶がありました。報道陣のインタビューもあり、最後に集まった人々全員が万歳三唱をしました。壮行会の終了後、自転車に乗った彼は勇ましく皇居前を出発しました。背中には、日本語と英語で「自転車世界漫遊」と書かれた旗がひらめいていました。
2月21日付けの東京毎日新聞には、そのような記事が載っています。その後、彼の消息は分かりませんが、この世界旅行を記念して絵葉書までも発行をしていますから、恐らく無事成功したのではないかと思います。
日本人の自転車による世界一周は、1902年(明治35)の中村春吉が最初です。この中村春吉の体験談は後に「中村春吉自転車世界無銭旅行」(明治42年発行)として冒険や探検小説を得意とした押川春浪が小説にしています。
この本は、当研究会で昭和59年に復刻しました。まだ少し在庫がありますので、ご希望の方はメールにてご連絡ください。