この自転車はポニー・スターと呼ばれ、アメリカン・スターの小型車です。名前のとおりポニーのような車輪径(後輪は約40インチ)の小さなスターです。一般的なスターは1881年にG.W.プリシーが考案し、特許を取得しています。製造したのはニュージャージー州スミスビルのH.B.スミスマシン株式会社でした。その後、1885年にはウイリアム・S・ケリーなどがスターに一部改良を加えています。
スターは、よく見ますとオーディナリー(ダルマ自転車)を反対にしたような形でハンドルやサドルが付けられていますが、これも安全型自転車への一つの試みでした。しかし、前への転倒は確かに防げますが、逆に後ろに仰向けに落ちて後頭部を強打する危険性がありました。私はイーグルに乗ったことがありますが、常に意識的に前かがみに乗らないと後ろへ転倒する危険と不安がつきまといました。いずれにしても馴れないと怖い自転車です。イーグルとスターの区別は、駆動部の違いにあります。イーグルは、たんにオーディナリーを反対にした形の自転車で、後輪をペダルクランクで直接回転させる方式です。スターはペダルを上下に踏むことによって皮製のストラップを介してラチェット式の後輪ハブを回転させる方式です。ですからペダルを同時に踏み込むこともでき、力強い発進が可能になります。それとクランクペダルのように回転させる必要がないため、車輪径も股下の長さよりもやや大きめのサイズに乗ることができました。なぜなら回転させる場合はペ ダルが一番下がった状態になったとき膝が伸びますが、スターは少しペダルを踏むだけでよいのです。ペダルを回転させる必要がないからです。
スターとイーグルは、アメリカでそれぞれ考案され、そして発展しました。まさにアメリカ人好みの自転車です。
写真は1991年7月1日にミシガン州デァボーン近郊にあるゲーリー・ウッドワード邸で撮影しました。ゲーリー・ウッドワード氏は、元フォードのエンジニアで、ザ・ホイールメンの会長も経験した人です。自転車の修理やレストアも手がけていました。