この写真にある自転車は、イーグル・ロードスターです。1886年にアメリカ、コネチカット州スタンフォードのL.B.ゲイローが考案し特許を取得しました。明らかにこの自転車はオーディナリー(ダルマ自転車)を前後逆にしたようなスタイルです。この形も実は安全型自転車への一つの試みから生まれました。スターのところでも述べましたが、オーディナリーは急ブレーキをかけたり、下り坂で石に躓いたりすると、前方へ飛ばされて頭を強く打つ危険性がありました。このような事故が多かったために、この自転車のことをヘッダーというあだ名まで付けられたほどでした。
イーグルは、前のめりで倒れる事故はなくなりましたが、逆に仰向けに倒れる事故が多くなりました。どうしても重心が後輪側に来ますので、それだけ後ろに倒れる危険が増したわけです。
イーグルは、乗っていて楽しい自転車ですが、乗るのにかなり練習が必要になります。オーディナリーの場合は、バックボーンの後輪上部に乗車時に使用するステップが後ろから見て、左側(右利き)にとりつけられていますが、イーグルにはありません。それではどのように乗るかといいますと、まず後輪の前に立ち、手を伸ばしてハンドルを手前に引きます。そうすると当然ながら前輪は上にあがり、ちょうど天井に向けられたような格好になります。そうすることによってサドル位置が体の前にきますから、この状態から一気にサドルに跨り、ハンドルを手前に強く押し出します。このときブレーキをかけていないと車輪が動いてしまい乗車に失敗します。慣れるまでかなり練習が必要です。たしかに難しい乗り方ですがこの辺がこの自転車の面白みの一つでもあります。まるで曲乗り(トリックライディング)のようです。乗車中はなるべく体を前にかがめます。上り坂は特に重心を前にもっていかないと後ろに転倒してしまいます。サドルから腰をうかせ前かがみになり力強くペダルを踏む必要があります。下車方法は、サドルからポンと飛び降りるか、乗るときと逆な方法で降ります。ハンドルを引き上げて、重心を後ろに移動させ、前輪が天井に向いたころあいでうまく降ります。
いずれにしましてもイーグルは、楽しい反面、危険と不安が初心者につきまといます。私の場合は、慣れる前に帰国しましたので、怖かった記憶のみ残っております。
ところで明治時代にこのイーグルやスターは、日本に輸入されたのでしょうか。いまのところ、この時代に日本人が乗っていたという形跡はありません。
この写真は、1991年6月28日にオハイオ州のフィンドレー大学構内で撮影したものです。この大学を中心に、第11回国際ベテランサイクルラリーが開催されました。イーグルに乗っている男性はザ・ホイールメンのメンバーの一人です。