2024年6月13日木曜日

明治自転車文化展関連

 明治自転車文化展関連

下の資料は1984年に自転車文化センターで開催された明治自転車文化展などについて、

自転車文化センター・インフォメーション - 5

1984.6.1

BICYCLE CULTURE CENTER

註、1984年(昭和59)の春に自転車文化センターで開催された明治自転車文化展(3月9日~4月1日)は、当時、全国に存在が確認されていた和製ダルマ自転車等が一堂に会した記念すべ展示会であった。


表紙
日本自転車史研究会所蔵資料

裏面

斎藤俊彦氏へのインタビュー記事

「明治自転車文化展」その後― 斉藤俊彦氏に聞く

――明治自転車文化展では、長年にわたって収集された明治初期の新聞記事など貴重な史料を多数ご出展いただき、あり がとうございました。自転車史をもう15年ほども研究なさっているとうかがっておりますが、研究家からご覧になった明治自転車文化展の意義といったものからお聞きしたいのですが・・・・・・。

「わたしは大きく3つの意義があったと思います。ひとつは日本の自転車史のあいまいだった初期の部分の解明の第一歩を自転車史研究の中心となるべき自転車文化センターが印したこと。ふたつめは、 鈴木三元が製作した三元車と発明の日誌が発見されたこと。これは自転車史の空白を埋めるたいへん貴重な収穫でした。 

最後は、われわれ歴史を研究する者にとって、東京、大阪の研究家やコレクター、 関心をもっている人との交流の場をつくるきっかけとなったことです。今まで名前は知っていたり、電話で話したことはあっても、実際に会う機会のなかった人たちとお会いすることができて、たいへんうれしく思いました」

――鈴木三元の功績をどう考えられますか。

「初期の自転車にはふたつの系統があったと思うんです。遊びと、人と物の運搬というような実用化しようという流れですね。銀山を経営し、経済的に恵まれていた三元は自転車で金もうけをしようというより、もっと視野が広く、交通のために役立てようとしたことがあげられます。地元の福島でなく、東京で広めようとか、考え方に企業家的なところがあり、 計画性に富んでいる点も当時は珍しかったでしょう。それからインテリだったので字が書けたこと。直筆の日誌をしたためられたわけで、今後、この三元日誌の詳細な解読を楽しみにしています」

――『自転車』の名付け親 寅次郎

明治自転車文化展を契機として、三元以前にも自転車の発明工夫に取り組んだ人物が発売願等の文献に残されていたということですが・・。

「明治3年に、神奈川県出身で東京に住んでいた彫物師の寅次郎という人が、三輪車の製造を東京府に対し出願しているんです。ある種の発明狂のような人で、財力はなく出願にはスポンサーがついているところが三元とは違っています」 

――発明でしょうか? 

「明治維新のころ、横浜と築地の外人居留地で馬車を見て、馬を使わずもっと手軽な車ということで考えだしたわけです。 外人が同じようなものに乗っているという記述があるので、独創ではないでしょう。ところで、寅次郎は「自転車」という名称を用いて明治3年に出願しています。わたしは日本で自転車という言葉がつかわれたのは、これが最初だと思います。それ以降、運道車、器械車、踏走車といった名称が出てきますが、この系統は人を乗せて運ぶ、実用をめざした車です」

――寅次郎も?

「多数販売したが、馬力がでないので12回つくり直したと記録に残っています。 明治11年の終わりごろ、運送業をはじめようと明治12年2月に東京・高崎間往復を試走しています。前に運転車があり、後ろに4人乗り客車がついた、2輛連けつの自転車です(上図参照)。写真も残っているんですよ。運転車に交替の運転手が乗り、高崎までこぐわけですから、たいへんでしょうね。結局、高崎まで2日間かかり、馬力が足りないということで、自分で許可を取り下げました。実用化には失敗しましたが、日本で最初に自転車という名をつけて許可を受けたという功績は残すべきでしょう」 

――今後ともご研究の成果をぜひ発表してください。

「寅次郎については早ければ今年の中ぐらいに、また、貸自転車を含めて自転車の輸出入など明治初期の自転車の実体について研究し、いずれ学会誌などに発表したいと思っております」 

――最後に、自転車文化センターに対す る要望を。

「歴史を含めた自転車文化の研究の中心 となってほしい。史料、年表、新聞・雑誌記事など基礎的な資料、関係文献を広く収集し、それをだれでもが読める制度をつくっていただきたいですね」 

――どうもありがとうございました。

斉藤俊彦氏 略歴 昭和4年熊本県生まれ、熊本大学法学部卒業、NHK 資料部勤務著作に「人力車」「生活の整理と工夫」がある。明治自転車文化展に史料を多数出展。



以下は参照論文


日本における自転車の製造・販売の始め
(竹内)寅次郎の事績ついて
齊藤俊彦 著 1985年