2024年6月15日土曜日

「輪界」第12号

 「輪界」第12号

 「輪界」第12号 輪界雑誌社 1909年(明治42年)8月25日発行

この号の30、31頁に、

商店巡り

今回新たに宮田製作所に於て米国より買入れたる自動旋盤

日本全国にて据付数僅かに三臺

社会は進むに從ひ人力より移りで獣類の力を以て物を製し事をなすに至り進んでは水力となり火力となり終に電力等の力を以てするに至る然るに口絵にある自動旋盤は宮田製作所より今回新たに亞米利加、合衆國のポツター、エンド・ジョンストン機械製造會社に注文して先月己に取り寄せ新築せられたる工場に据付けたり尤も此自働旋盤は該會社が學理と苦心とを以て発明せしものにして米国の機械製造会社に於ては少し大工場となると随分此自働旋盤を使用するものなれども欧州には未だ使用し居らざる會社多数あり殊に我日本に於ては東京砲兵工廠に一臺及大坂砲兵工廠に一臺据へ置きあるに過ぎず故に我日本にては宮田製作所に据付ある自働旋盤と合せて三個あるのみなり此の器械は大なる鐵を以て製し其回轉正確にして表裏同時に作製仕上をするに便利なり尤も此器械は強力を以て重量に於て容積に於て大なるものを確實なる時間に確實なる速度を以て回轉するを以て其正確なるを知るべし

此器械は總量實に七百貫以上の大旋盤にしてこれを輸送するに實に困難なりしなり而しに此器械にては種々の製作物を作製し得れども主としてコ ースターブレーキハブ、前輪後輪ハブ、大小歯車等を自働的に製作す然して回轉正確なれば如何なる精密なるものも製作することを得るなり

而して此器械は之れを使用するに製作物によりて其標準を定むる故に今日は甲の品を製し明日は乙の器を作る如く日々作製物を變更するには利益少なし故に此器械を使用するときは少なくとも數日若しくは數十日同一のものを作製せざるべからず故に米國では大概一旋盤にては大略同一の物を製する様にせり

又此自働旋盤は大なる鐵製なれば普通の旋盤より約十倍以上の作製力を有して居る故に大工場にはこれを用ひざるべからざるなり

今其價額を見るに如何なる自働旋盤にても參千八百圓以上にあらざれば買ふこと能はず

余一日宮田工場を訪ふ時己に此自働旋を据付けたる當時なれば其從覧を請ふて許諾を得たり然れども余器械に付き甚疎く爲めに其要領を精知する能はざりしも其甚精巧の器械たることはこれを見て大に其智識を得たるを以て知るべし

故に工業に従事するの士或は如何なる場所に於て如何なる器械を知られるや知るに由なきも兎に角此自働旋盤は見て以て大に利益あることと信ず


表紙
国会図書館所蔵資料
以下同じ

英国ラーヂ会社主人と日米商店主対話の景

英国ラーヂ会社の光景

30、31頁

今回宮田製作所に買入れたる自動旋盤
(記事参照)

目次

ラーヂの広告
日米商店

シンガー自転車の広告
江商合資会社自転車部

キング競走車の広告
競輪舎