2026年4月30日木曜日

自転車世界一周 - 10

 自転車世界一周 - 10    

「自転車世界一周」ジョン・フォスター・フレイザー著

註、『Round the World on a Wheel』(1899) は、 John Foster Fraser、 S. Edward Lunn、 F. H. Lowe の3人が、1896〜1898年にかけて世界一周を自転車で走破した記録。以下は日本旅行の部分、その10。

奈良の森にて

私たちが訪れた日は神道の聖なる日で、その日に生まれた子供は、前日や翌日に生まれた子供よりも1歳年上と数えられた。何千人もの巡礼者が神社を訪れていた。八角形の帽子をかぶり、長い灰色の絹の衣をまとった、頬のやつれた老人が、杖を振りながら寺から寺へとよろよろと歩いていた。剃髪し、黄色の袈裟をまとった僧侶が、静まり返った参道を厳粛な表情で歩いていた。

愛らしい日本の乙女たちが、下駄を履いて、互いの肩に寄り添いながら腕を組んで歩いていた。木々は長い枝を小道の上にアーチ状に伸ばし、膝まで埋まるシダの中から鹿が飛び出してきた。長い角を持つ雄鹿と優しい目の雌鹿が、恐れることなく走り回り、鼻を人の手に押し付けて餌の匂いを嗅いでいた。鹿は人間と友好的に暮らしている。昼間は森や小道を歩き回り、日没時にはラッパの音が響き、軽快な跳躍で夕食と柵の中の避難場所を求めてやってくる。

杉並木が、松林に囲まれた寺院へと向かっている。幹は赤褐色で、緑の葉が優しくささやき、霜で赤くなったつる植物が頭上で揺れる。苔むした水盤に流れ落ちる水の音が聞こえる。古風で、はるか昔を思わせる静寂な地衣類に覆われた石灯籠が、道沿いに2、3列並んでいる。今夜は灯籠にろうそくが灯され、和紙の覆いが風を防ぎ、木々の間には美しい影が舞い、きっと妖精たちが陽気に過ごすだろう。

しかし今は午後で、光は薄紫色に染まっている。私たちは巡礼者たちの間を散策し、神社の赤い鳥居をくぐって本殿へと向かう。春日大社には、何百もの彫刻が施された緑青の灯籠が静かに揺れている。他にもたくさんの寺院がある。若宮神社では、黒髪をほどいた若い娘たちが、藤の花で飾られた薄絹の衣装をまとい、厳粛な舞を踊る。彼女たちは緋色の椿の枝を優雅に振り回す。老僧たちは鐘を鳴らし、経を唱える。
近くには、雑草が生い茂る静かな池がある。娘たちは手をつないで、黒い水面を悲しげに見つめる。何百年も昔、ここで美しい乙女が、身を投げたと伝わる。彼女は天皇の息子を愛していた。彼女は日本のオフィーリアだ。

森の薄暗い奥まった場所に、忘れ去られたような神社がある。大きく広がる軒と素晴らしい持ち送りは、芸術的に朽ち果てつつある。信仰が、寺院を神秘と詩情で包み込んでいる。鐘の響き、僧侶たちの声明、シダの間を歩く鹿のざわめき、少女たちの軽やかな笑い声が聞こえる。自転車のシューッという音が長い並木道に歌い、ロンドンの自転車乗りの「気をつけろ!」という叫び声が、静寂を破る。

またしても素晴らしい一日、澄み渡り、穏やかで幸せな朝が私たちを迎えてくれた。わずか35マイル離れた古都、京都へと出発した。

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挿絵、神社の入り口

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