2021年4月25日日曜日

改良型ベロシペード

 改良型ベロシペード

先日、何気なくThe WheelmenのFacebookを見ていたら、下の投稿記事が目に留まった。

この資料は、
「英国のメカニックと科学のミラー」という雑誌のコピー記事で、
概略、次のような内容である。

1869年5月28日
「英国のメカニックと科学のミラー」
フランスのベロシペードの改良。
スケッチを読者諸兄に送る。
として、W.エルフという人が投稿、
フランスのベロシペードよりも、このイギリスの改良型ベロシペードの方が構造的に大きな利点がある、とのこと。
このベロシペードはイギリスのグレートサフォーク通り7番に住むピアス氏により製作されたもの。

以下に原文の記事を書きうつす。

MAY 28, 1869
ENGLISH MECHANIC AND MIRROR OF SCIENCE
IMPROVEMENT ON THE FRENCH VELOCIPEDE.

SIR-I forward for use of brother-readers a sketch of a velocipede which I consider to possess great advantages over the French two-wheeler. The cranks are 9in. long, while in the French arrangement a 6in.-crank can be used only. Again, the motions are to and from, or forward and backward, and therefore do not cramp the legs; while in the French up and down motion the thigh and knee-joint are at a more acute angle.

With my new velocipede I can go up an incline, while the Frenchman's contrivance must be pushed up. My velocipede was made by Mr. Pearce, 7, Great Suffolk street, Borough.
W. ELVEN.

ところで、次からが本題であるが、興味を引いたのは一見、錦絵の「東京日本橋風景」歌川芳虎 画(明治3年6月、1870年)に描かれている片羽自転車に何となく構造的に似ているからである。
その図を下に並べたので見て欲しい。
どうであろうか、まったく違うという人もいるかと思うが、私はかなり類似する点があると思っている。ミショー型のようなペダルクランクの駆動方式ではなく、クランクシャフト方式であるからで、錦絵の方は、正確にクランクシャフト方式かどうか判然としないが、どうみてもペダルクランク方式でないことは分かる。(ある面、カークパトリック・マクミラン式とも言えるが、この二輪のマクミランは研究者の間で否定され、既に自転車史から消える運命にある)

私は以前この錦絵の自転車を見たときに、どこかに似たような構造の自転車がないか探していたのである。他にも探せば出てくると思うが、今のところ未見である。
ただ、ハンドル部の構造がかなり異なり、片羽自転車の方は手足駆動のようにも見える。どちらかと言えば2輪のラントン式か。
それに、双方とも方向転換をする時に前輪がステーに当たるようにも思える。片羽自転車の方はハブステアリングのようである。(註、片羽自転車とは直列の二輪車のこと、当時は三輪車のことを自転車と呼んでいた。)

このクランクシャフト方式の自転車がその後、進展を見ていないところをみると、機能的に優れていたとは言えない。それは歴史が証明してくれている。

ピアスの改良型ベロシペード
1869年

「東京日本橋風景」歌川芳虎 画の中央
片羽自転車
明治3年6月、1870年

錦絵の全体 三枚続き