土蔵の光もの
ニューサイクリング誌
1993年1月号より
先般、知人との会話の中で、土蔵のお宝物の話が出た。
自転車を趣味とする人ならおそらく誰でも古い自転車店やその店の倉庫や倉などが気になったはずである。
私も40年以上前は、よくそのような老舗ショップを尋ねた。
下の記事も似たような体験談である。
・・・それで当時は、練習で東海道を登ったり下ったりしていたので、途中の町の目ぼしい自転車屋さんをかたっぱしから訪ねているうち、とうとう清水市の江尼でまさごやさんという自転車屋に飛び込むことになった。ご主人の好意で、しっくい塗りの大きな土蔵に案内され、一足中に入ったら、あるわあるわ、 戦前の外国部品がぎっしり詰っている。どれもこれもピカピカの新品だった。悲しいことに先立つものは誠に少く、涙をのんでコベントリーのチェーンを一つだけ分けていただき、後髪を引かれる思いで土蔵から出ようとしたそのとき、右手の暗いすみで何かが光ったのに気が付いた。何気なくそばへいって見ると、ニッケルメッキのハンドルバーでひどく幅が広い。これはダメだと思う一方、万一ポストがあれば、と御主人に聞いてみたら、”ああ、ありますよ。でもこれは長すぎて” 奥から出してくれたものがまさしく出合いそのもの。カナダのCCMというスケートのメーカーの製品でニッケルメッキの9㎝のつき出しボストだった。このポストで私はそのあとの長い期間、競技に参加し、昭和28年に現役を去るときまで、・・・・加藤 一
ニューサイクリング誌
1993年1月号より
資料提供:渋谷良二氏
同上 15頁
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この目次にある投稿者を見ると、何人も面識のあった人が名を連ねている。