2020年11月3日火曜日

自転車専用工具

 雑誌、「サイクル」第9巻第3号、(株)サイクル時報社 1961年(昭和36)3月1日発行で自転車専用工具についての記事を見つけたので紹介する。同書の83頁~87頁

読者からの質問に鳥山新一氏が回答している。(外国製工具の部分を抜粋)

Q、どのような自転車専用工具があるか?

A、日本で容易に入手できる外国製工具

第2図 外国製の携行用の工具

(B)外国製工具 
第2図は現在入手しやすい外国製工具の一例です。
外国製であるからといつて無条件に良いというものでは決してないので、内には日本製の二級品以下というひどい品もあります。
しかし世界的に名の通っているものは流石に良くて、使っていても具合が良い許りでなく、耐久力もすぐれています。
工具類は長く使うものですし、肝心の車やパーツ、ネジを傷めては何にもなりませんから、外国品と限らず、とにかく手の及ぶ範囲で良いもの(良否の判定は後で説明します)を購入する方が賢明といえます。

第2図のものの価格を例示してみますと次の通りです。
◎スエーデン、「バーコ」
・モンキーレンチ150ミリ 750円、100ミリ 550円
・プライヤー 200m  800円
◎アメリカ、ダイヤモンド
・モンキーレンチ4吋 400円
・貫通ドライバー4吋 130円
・ラチェットドライバー(十一)200円
・ヘッド廻し 270円
・ドライバー6吋 250円

第3図 フランスMAFACの携行工具キット

外国の自転車には完成車に附属工具として、板スパナー類とタイヤレバーなどのセットが附属しているものが多いのですが、日本の商習慣としては、今はそういうやり方の車は見当りません。
外国特にフランスでは携行用工具のセットの良いものが(品質と組み合せの両方の意味で)沢山ありますが、第3図はその一例で、
フランスのMAFAC(プレーキと同じ)のセットの一つです。
このMAFACの工具セットは極く簡単なものからオートバイ用の大型携行用セット迄いろいろの種類のものを出しております。
この第3図のものは小さい方から二番目のものですが、実によく考えてあるセットで、まずこれだけあれば十分に用がたります。
MAFACのフッデッドブレーキのレバーのブラケットの奥にある締付ボルトのナット用のソケットレンチ迄入っているので便利この上なしです。
ペダルスパナー、ニップル廻しも入っています。
こういうセットはとかく役に立たない寸法のものがあつても、肝心のよく使う寸法のものが欠けているものですが、その点このセットはよく考えて揃えてあります。
 しかし一番大切なことはやはりや 肝心の車や部品がしっかりしていることで、そういう車なら、工具を持って出ても使う機会はまずないものです。
私の愛用しているRENE HERSE の車は29年からずっと使っていて33年正月に画鋲を踏んでパンクをする迄、一度も工具をあてたはことがありません。
話が一寸よこにそれますが、こりのRENE HERSE の車の親切なところは、全てのボルト、ナットのこの頭のサイズをすべて9ミリスパナーに合わせて統一してあることです。
泥除けステー止め、ダイナモブラケット、パニヤー台の足止めナット、カンティレバー取付けナット、フロントディレイラー取付けナット、シートピラーボルト・ナット、ハンドルバーステムのバーのクランプボルトのナット、等々
すべて9ミリサイズですから、9ミリのボックススパナー1本で全部の用が足りるのです。
あとのコッターレスクランクやステムは特殊工具です。
こういう点は流石に世界の第一級のオーダーメイドの車としての貫録十分といえる点で、これだけの配慮はやはり大したものです。
日本でもせめてオーダーメイドの車位はこのような神経の細いところをみせて欲しいものです。

その他の工具写真

第1図 国産工具

第4図 日曜自転車用工具

第5図 フランスの自転車用工具セット

第6図 三光社フリーはずし

第7図 取り外し金具を装着

第8図 三光社フリーはずしセット

「サイクル」第9巻第3号 表紙
1961年(昭和36)3月1日発行

裏表紙