2025年7月25日金曜日

スティーブンスの日本旅行記 パート2-25

 スティーブンスの日本旅行記 パート2-25

枝は垂直の支柱に水平に伸び、数百平方ヤードの広い庇を形成している。東海道側には、この巨木を模した小さな松の木も広がっている。 

湖を見下ろす山々の斜面に雪が積もり、小さな汽船や多くの帆船が穏やかな水面を行き交い、雁も飛んでいる。左手にこれらの美しい景色、右手に茶畑を望みながら、東海道は松並木を抜け、湖岸沿いの多くの村々を通り過ぎて行く。

中山道は、乗馬鞭の製造で有名な草津村で左に分岐する。石部を通り、横田川を渡るところまで東海道は平坦で良好な状態を保っている。この川の交差点の近くには、3匹の猿が目、口、耳を覆っている興味深い庚申塔がある。これは「悪いことを見ず、聞かず、言わず」という意味である。この地域では主に茶の栽培が盛んで、起伏のある尾根や丘陵地帯のなだらかな斜面に、濃い光沢のある茶の木が茂り、はっきりとした畝や群落が広がっていて、とても美しい。

急な斜面をジグザグに下り、東海道は八十瀬川の小さな谷へと下って行く。丘の麓には奇妙な祠のような洞窟があり、粗雑な偶像がいくつかある。金魚の入った水槽、そして私が今まで見た中で最も粗雑な仏像が一つ安置されている。野心的な仏像彫刻家の狙いは、「大いなる静寂」の擬人化を創造することにある。八十瀬川の谷にあるこの像は、まさにこの方面における傑作と言えるだろう。かすかに口と鼻が彫られた長方形の巨石が、人間の形を朧げに削り取った直立した石板に鎮座している。これほど静謐なものはないだろう。

あと1、2マイル進むと、46マイルの旅は坂の下村で終わる。快適な宿屋が待っているが、ほとんどの日本の村と比べても良くも悪くもない。しかし、東海道沿いの宿屋の主人は、神戸以南よりもヨーロッパ人の客に慣れている。毎年夏になると、多くのヨーロッパ人とアメリカ人の観光客が人力車で横浜と神戸の間を旅する。

この宿屋で、私は初めて日本独特の制度、盲目の按摩師に出会った。


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庚申塔

伊勢坂ノ下筆捨山之古跡 (書画五拾三駅)
歌川芳虎 画 明治5年
国会図書館所蔵資料