戦後まもなく航空機の技術者であつた本庄季郎技師が製作した三菱十字号は精緻な強度計算からうまれた自転車でした。
十字号のコンセプトは次のような考えから発想されました。
一、戦時中大量に航空機用材として生産されたアルミニューム合金材を平和産業に転用し、これを有効に利用する。
一、すでに定着したダイヤモンド型フレームはもはや改良の余地がないのか。
一、鋼材の溶接作業にかわり、できるだけプレス作業を利用する。(航空機のプレス作業用機械が遊休中のため)
一、機能を向上させながら工作の合理化、簡便化さらには材料の節約など。
一、分解、組立、手入、取扱の簡易化。
一、精密な構造及び強度計算による安全率の確保。特にアルミ軽合金材の撓みを考慮する。
こうして、三菱十字号は1947年(昭和22)に生産を開始しました。その後、Ⅰ型からⅣ型まで進化して行きました。
1950年6月に勃発した朝鮮戦争の特需景気とともに三菱は本来の重工業へと戻って行き、十字号の生産も中止となりました。
写真提供:自転車文化センター この三菱十字号はⅠ型です。
参考資料:
雑誌「自然」3号 1947年発行(自転車の強度 本庄季郎)
「三菱重工業技術部報告」第62号 1947年 同技術部発行