2020年9月21日月曜日

ダブリン三輪車

今日も三輪車である。
シンガー三輪車が先かダブリン三輪車が先か?
この辺のところを少し探ってみたい。
結論から言えばどうもダブリン三輪車の方が年代は早い。
ダブリン三輪車は、1876年にウイリアム・ビンドン・ブラッド(1817-1870)が特許を取得している。彼はアイルランドのクイーンズ・カレッジ・ゴールウェイの土木工学の教授であり、エンジニアでもあった。専門は橋梁の設計等で、アイルランドにあるドロヘダのボイン高架橋の設計に携わったといわれる。この橋は中央のスパンだけでも長さが269フィート(82m)もあり、この鉄道橋が1855年に完成した時は世界最長であった。
ダブリン三輪車を見ても何となく構造的に橋梁のイメージを感じる。思い過ごしであろうか。橋桁構造は近年でもモールトン車にその片鱗がうかがえる。フレームの軽量化と強度を考えた場合にこの橋桁構造は有利である。

シンガー社とウイリアム・ビンドン・ブラッドの関係は未調査だが、どうも関連があったようだ。これらのことを考慮すると、どうやらシンガー型三輪車の元祖はダブリン三輪車であり、その後シンガー社が改良を加えて量産し、世界的に販路を広げていった。その数台が日本にも輸入され宮武外骨が少年の頃(1884年)に乗り、あるいは鈴木三元がこれを参考にシンガー型三元車を製作したのである。

ダブリン三輪車 1876年
ロンドン科学博物館所蔵
この写真の方がハンドルの位置がよくわかる
座席前部の左右に操縦桿のようなグリップがある

フレームの上部のコイルスプリングに取り付けられた座席
前輪は並列2輪のステアリングホイールと大きめの後駆動輪
1876年にかなりの人気を得たと言われる