先日、オーストリアのウイーンにある技術博物館のWEBをみていたら、シンガー三輪車や三元車になんとなく似た三輪車が目に留まった。詳しい解説はなかったが、その三輪車はエルラッハ三輪車(Erlach Tricycle)と呼ばれ、フィラッハ郡のコルピッチ村に住んでいたヨーゼフ・エルラッハが1878年頃に製作した三輪車とある。
この三輪車の構造を見ると、前が並列の2輪、後ろがやや大きめの1輪で、形状はシンガー三輪車と同じである。駆動方法も後輪を回転させる足踏み式シャフトドライブであり、これもシンガー三輪車と同じ構造だ。相違点といえば、ハンドルグリップの形状で、この三輪車は垂直棒状であり、シンガー三輪車はスコップの柄のような形である。シンガー三輪車が1879年の製作であるから、それよりも1年早いことになり、この構造の三輪車としては、今のところ元祖に近いと言ってよいかもしれない。このような年代差ではどちらが元祖か微妙であり、むしろ同時代といったほうが正確だろう。繊細さと技術的な高さはどうみてもシンガー三輪車に軍配を上げたい。日本でもシンガー三輪車は宮武外骨が少年時代に乗っているし、鈴木三元はこれを見て三元車を製作している。この様にその後の影響力もシンガー三輪車が上であると言える。
エルラッハ三輪車の写真と説明は → このサイトを参照。
エルラッハ三輪車 1878年頃
シンガー三輪車 1879年頃
写真提供:オランダのトムさん
三元車 1883年頃
写真提供:自転車文化センター