2021年2月4日木曜日

自転車日記⑨

 自転車日記⑨

1980年9月19日(金)曇り

 月刊雑誌サイクルスポーツの広告欄に、「自転車に関する珍品、奇品、古道具及び昔の自転車製造工具、警番、木製ポンプ、竹製荷掛、ノーパンクタイヤ、明治時代の自転車等を蒐集しているので、ご存じの方は連絡下さい。
「レジャーランド、フジサワ」というのが載っていた。
 古い物を集める方法として、このように雑誌で探求するのも良いと思うが、果してどれ程の効果があるであろうか。サイクルスポーツ誌は、どちらかと云えば読者層が中学生や高校生などの若い世代なので、あまり期待できないのではないか。それならばむしろマス・メディアの筆頭である新聞に掲載した方が効率的であろう。
 しかし、話しは簡単なのだが掲載料がバカにならない。それに一回や二回の掲載では反応は余りない。ある程度間隔を置いて定期的に掲載する必要がある。 そうなると、余程カネに余裕のある人でないと長続きしない。効率的でしかも安上りの方法でなければダメだ。
 以前、職業別の電話帳を引っぱり出して、近いところの自転車屋さんから片っ端に「お宅には古い自転車やパーツ、カタログ等はありませんか?」と電話をかけた事がある。しかし、全く無駄に終ってしまった。むしろ、いたずら電話でないかと誤解され、相手にされなかった。それに、日本の自転車屋さんは、一般に奇麗好きなので、戦災をくぐりぬけた貴重なものでも、古いものは焼却してしまったか、ゴミとして出してしまっている。だが、田舎のあまり繁盛しない古ぼけた自転車屋さんには、今もあるかもしれない。クモの巣のはった天井に、埃をかぶった古い自転車が吊り下がっていることだろう。壁には赤く日に焼けた古いポスターが貼られ、棚には乱雑に工具や部品類が積んであるかもしれない。
 それでは、どうしたらこの様なものを集めることができるか。一人だけで探していては、自ずから限界があり、結果的にもたいしたものは集まらないであろう。最善の方法は、やはり一人でも多くの同好の士を募り、情報の輪を広げて行くことではないか。


註、現在は便利な時代になった。ヤフオクなどで簡単に探しだすことができる。
ただし、歴史的に価値のあるものは、殆ど不可能に近い。いまだに50年以降のクラッシクパーツなどが中心になっている。それもほとんどが外国製のブランド物に集中している。国産のパーツや完成車はいまだ人気がない。戦前の国産完成車や国産パーツ類に興味が向かうとよいのだが、無理であろうか。
おそらく現物はゴミとして既に捨てられている可能性が高い。
(2021年2月4日、記)