2021年2月9日火曜日

空中自転車と水上自転車⑦

 空中自転車と水上自転車⑦

 人類の永年の夢であった、空を飛ぶということは、今や実現され、月まで行く時代となった。しかし、ライト兄弟がキティホークの風に彼らの飛行機をフライトさせるまでには多くの先人達があらゆる工夫と努力を重ねてきたのである。

 その一つに、自転車の動力を使って、いかに空を飛ぶことが出来るかというテーマで、当時の好奇心ある人々の関心事であった。この挑戦は現代にも受け継がれ、研究機関や大学で試みられている。しかし、人力による完全なる飛行は、残念ながらまだ成功していない。ハングライダーによる飛行がある程度の可能性を暗示しているが、これとても、地上から完全な形で飛翔することはできない。このハングライダーと自転車の動力をうまく組み合わせて、人力飛行機ができそうに思えるが、そう簡単には行きそうにない。

 これから紹介する空とぶ自転車も、当時の好奇心ある発明家達が残した足跡の一つである。こうした先人達の一歩一歩の努力が人間を月に送り込んだ原動力であることを忘れてはならない。

明治29年10月21日付けの毎日新聞に、次のような記事と画がある。

●羽翼輪
 左の図は露西亜(ロシア)人フリーマンと云える人の発明にて目下新約克(ニューヨーク)にて製造中なりフリーマン氏は欧州米国各政府より発明専売の特許を得る迄は之を世に公にせずと云い居り此製造監督の為め氏は現に新約克に滞在すという。

 水上自転車の時もそうだが、こういう記事を読む時常に感ずることは果して成功したのかという疑問である。
 新聞記事というものは、とかく読者の興味を引きつけるあまり、むしろその結果よりもこれから挑戦しようとすることに視点を置いているように思える。
 結果は成功した時のみ大々的に報道し、失敗した時は知らない、という姿勢である。確に読者は失敗した記事など読まないし、当然かもしれない。したがって、このフリーマンの人力飛行機も、恐らく試作されただけで、フライトには失敗したものと思われる。
 ところで話しが前後するが、人類初の飛行を成し遂げたライト兄弟は、ライトサイクルという自転車店を経営していた。自転車の技術が人類を飛翔させたと言っても過言ではない。

羽翼輪
明治29年10月21日付け毎日新聞

ライト兄弟が初めて飛行に成功した時の歴史的写真
1903年12月17日