銀輪部隊関連 - 6
「マレー血戰 カメラ戰記」朝日新聞特派員 影山匡勇 昭和18年1月18日發行
シンガポー ル街道をべダル踏んで颯爽と南下する報道小隊。
写真50
シンガポール街道
国会図書館所蔵資料
以下同じ
写真の目次
143頁
3、ペダルの進軍
敵の潰走したあとに、乗り棄てられた自轉車を發見して僕等は狂喜した。チェンの外れたもの、空氣のないもの、ガタガタきしむもの、ブレーキのないもの、タイヤのないものなど、片輪ものばかりをかき集めてそれでも歩くよりましだと、乳母車部隊は忽ち銀輪部隊に改装された。誰の車も景気よくキューキュー、ガラガラ、ズーズーと騒音を撒きつつ、賑かに走って行く。 これが何と意外にも舗装道路では、戦車のキャタピラの擬音であった。始めは、吃驚して逃げてゆく住民たちを笑ってゐたが、この效果が覿面に現れた。それは一月四日の夜半のことである。シンガポール街道にあるビドゥの郊外で通信兵三名が連絡の途中、十数名の敗残兵に襲はれて見動きもならぬところへ、第一線部隊を追ふ我々報道班十一名の「破れ自轉車部隊」が闇の中をガラガラ、ガラガラと通りかつたら、「戰車だ!」「戦車だ!」
と敵は慌てて潰走してしまったと。知らぬうちにこんな嘘のやうな手柄をたててゐた。 ビドウではマレー住民が、我々に新車を提供してくれたので、殊勲の破れ自轉車にも惜しい別れを告げて、今度は颯爽たる銀輪部隊と變わった。・・・