2024年7月31日水曜日

レンツとアウティング誌 - 18

 レンツとアウティング誌 - 18

「OUTING」 スポーツ、旅行、レクリエーションのイラスト入り月刊誌

第 22 巻 1893年4月 - 9月 合本版

「OUTING」 AN ILLUSTRATED MONTHLY MAGAZINE OF SPORT, TRAVEL AND RECREATION .

VOL. XXII APRIL - SEPTEMBER 1893

241頁、

日が短くなり、夕方 5 時には暗くなってしまったので、国府津で宿泊せざるを得なかった。人力車の車夫に一番良い旅館はどこかと尋ねた。

旅館の主人を呼ぶと、何度も挨拶して、旅館の中に入るように勧めた。ここでの習慣はまた変わっていて、主人は私の靴を脱がせた。誰もが家の中をスリッパか素足で歩き回っている。彼は私を部屋に案内したが、そこにはテーブルも椅子もなく、ただ座布団が床に置かれているだけだった。日本の仲居はとても気配りが行き届いており、常にそばにいて、あらゆる注文に笑顔で応じてくれる。この正直な人たちの間には鍵のかかるドアはなく、単に障子で仕切られているだけである。ご飯、魚、スープ、お茶、ケーキの日本食は、小さなお膳で出され、もちろん仲居は私のそばにいて、あらゆる面で手伝ってくれた。箸はあったが、私は用心してフォーク、ナイフ、スプーンを持っていた。私が食べるのを見て、仲居はむしろ面白がっていた。

ここで、日本の習慣におけるもう一つの驚きが私を待っていた。宿の主人がやって来て、入浴したいかと尋ねた。私が「はい」と答えると、私は風呂場に案内された。そこで私は、男女が同じ浴室と浴槽で入浴しているのを見て、ただただ驚いた。息を整え、驚いたようには見えないようにて、私は服を脱ぎ、まるで何年も日本にいたかのように、6人の日本人女性と男性を気にせずに湯船に浸かった。


241頁

国府津駅前の蔦屋旅館

註、参考までに蔦屋旅館の絵葉書を載せる。この絵葉書は大正期のものだが、レンツの頃のイメージを伝えている。蔦屋旅館は当時国府津では有名な旅館であった。おそらくレンツはこの旅館に宿泊して、生まれて初めての混浴風呂を体験したのである。
現在この蔦屋旅館は廃業していて存在しない。

国府津にあった旅館
大日本職業別明細図 東京交通社 編 昭和12年発行
国会図書館所蔵資料
以下同じ

国府津駅周辺の地図

蔦屋旅館の別館

現在の国府津駅前
2024年7月25日(木)晴れ
自転車で現地調査

駅前のこの辺りに蔦屋旅館はあった

国府津館
現在は廃業

帰路に国府津の天神さんに寄り涼む
この日も猛暑で、13時現在の気温は36℃