石野自転車店
「全国製造卸商名鑑」 昭和10年度版
石川縣 卸商之部
金澤市石浦町五十五
石野自轉車店 明治二十六年創業
写真でみる石川の百年 石川県写真師会 1967年発行
現在の石野自転車店
Googleストリートビューより
全国製造卸商名鑑 昭和10年度版
4頁
大金沢繁昌記
北国日報社事業部 昭和10発行
石野の自轉車奮闘史
當地方輪界の元祖として有名な金澤市石浦町石野義延氏(五九)の經營する石野自轉車店は、先代義延氏が明治廿六年米人牧師ウイン氏に勧められて直接米國から輸入したのがスタートである。商機に敏な先代は世間の嘲笑を事ともせず自轉車の普及に努力したもので如何に利用者が稀であつたかは、道路に初めて車輪の跡を見た人が曰く「之は誰々の自轉車が通った跡だ」と云つた當時の逸話でも偲ばれる。斯くの如き苦難の道を経て我が石野自轉車店の聲價は全國にあまねく、磐石の基礎は出来たのである。當主義延氏は石川縣自轉車同業組合長を八年も勤められて斯界に隠然たる勢力を有し、且長男一郎氏(二五)の新進気鋭の俊敏と相俟つて前途益々多幸なるものがある。同店が本縣特產品として全國的に目下賣出してゐるゴム輪の車輛に就て石野氏は次の如く自信ありげに語つた。ゴム輪の車輛にリヤカーの車輌から考案し、スポークを木製にして車輛を作りました處非常に受けたものですから爾来一日として改革の手を休めた事はありません。(寫真は石野義延氏)