少年世界
「少年世界」 第5巻 第5号 名著普及会 1899年2月15日発行
自轉車談 (器械談)
京都 淺田空花
其一 緒言
馬車、腕車、荷車、さては電車、行きつ戻りつ、漂人の数限りなく、来往絡繹、混々難々たる中に今一つ新たに道路の眺めを添たるものあり、自轉車これなり。茲、七八年前迄は横濱、神戸、若くは長崎あたりの居留地を舞臺とし僅かにこれ等の邊隅に割拠して行路の耳目を驚かすに過ぎざりしもの、今は大に然らず、京、大阪は云はずもあれ、苟しくも紳士あり、玉突場あり、若しくは玉突場様のものの組織さるる所には殆んど其影を止めざるなく、近く京都に於ては近畿の同乗者三百餘名を招待して、大競走會を開き、平和神宮社頭、 京洛の山河を震動せしむるもの勢、實に凄まじきものありき。東京に於てもこれと数日を隔てて京濱乗手數百人を叫合して、壯大なる競走會を催ふしたりと聞く。・・・
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少年世界
国会図書館所蔵資料
以下同じ