2020年10月3日土曜日

デザイン博

1989年(平成元)7月15日から11月26日までの4か月間、世界デザイン博覧会が名古屋市(市制100周年記念)で開催された。
その時のワールド・ハイバイシクル・チャンピョンシップの写真が数枚出てきた。
デザイン博覧会では3会場(白鳥公園、名古屋城・名城公園、名古屋港)に分かれ、各種の行事が開催された。
その一つが、このワールド・ハイバイシクル・チャンピョンシップ(ダルマ自転車による競技)であった。

以下は、日本自転車史研究会の会報「自轉車」49号、1989年11月15日発行の記事である。

ワールド・ハイバイシクル・チャンピョンシップを見て

 いまにも降りそうな空模様の名古屋港会場に着いたのは、15時ごろであった。博覧会にしては人もまばらで、そのようなイベントがあることさえ信じがたいような雰囲気であった。(日本人はこのような自転車に興味のない証拠であろうか?)
中央ステージ前の広場に、オーディナリー自転車を見つけた時は、なんとなくほっとした気分になった。しかし、閑散としたもので関係者以外の見物人は少ないようであった。
そのうち障害物競技が始まった。スタート地点から5メートル程のところに台があり、その上に水を入れたコップが置いてある。オーディナリーにまたがると直ぐそのコップをとって水をこぼさないように運ぶという競技(古代水運び人、Ancient Water Carrier)である。
途中、棒高跳びのようなバーが障害として置かれ、それをくぐり、また戻って来て、手に持ったコップを元の台に置くのである。簡単なようだが、背の高いオーディナリーでバランスをとりながらやるのだからかなりむずかしい。何人かの選手は、コップが取れないで、そのまま走って行ったり、なかにはバランスをくずし落車した選手もいた。
次に行なわれた競技は、古代戦士 (Ancient Warrier) と云って、長い棒(槍)を持ち、標的を打つものであった。

古代水運び人
Ancient Water Carrier

選手数人が競技を終えたところで、雨が降りだした。はじめのうちは、ポツポツときたが、そのうち段々ひどくなり、嵐のような状況になった。結局競技も中止ということになり、我々もステージに逃げ込んで、雨が小止みになるのを待った。
次の日(23日)は、昨日の天気とうって変わって、秋晴れのよい天気となった。会場は熱田神宮近くの白鳥と変わり、この日は短距離種目が行なわれた。
11時半、開会式とパレードが始まった。各国の選手は、それぞれ、その国にふさわしいコスチュームで現われ、見物人をオーディナリーに乗せたりして盛んに愛嬌をふりまいていた。オルガナイザーである J・ピンカートン氏もニッカーボッカーズといつものトレードマークであるバッチをたくさん付けたハンチング帽をかぶって現われた。
競技が行なわれる会場は、ちょっと中央ステージからはずれていたので、きのう同様少ない人出が予想されたが、拡声器の声とスタートのピストルの音で、だんだん観衆も集まり出した。この日行なわれた競技は、スローレス、スラロームレース、スプリントレースであった。

スローレース

私の見た競技は、22日と23日の2日間であったが、この世界選を見て感じたことは、率直に云って日本ではまだ時期尚早だと云うことである。このイベントを契機に関心が高まればよいのだが、マスコミの方も余り反応がなかったように思える。それに日本では欧米と違って過去にオーディナリー自転車が流行したという歴史がなく、現存する木製のダルマ自転車を見ても完成の域を出ていない。この辺のところが愛好者がいない一番の原因かもしれない。
これからの課題としては、歴史的な位置付けはさておき、単にスポーツとして、レプリカのオーディナリー自転車を楽しむか。それとも日本独自のクラシック・サイクルスポーツを開拓するかである。
私の個人的考えでは、今後ますます国際交流も頻繁となるので日本の自転車メーカーあたりがラッヂやコロンビア等をモデルに忠実なレプリカのオーディナリーを製造し、積極的に販売することである。そのようになれば国内に愛好者のクラブもでき、一つのスポーツとして確立されることであろう。(積極的な販売は無理か?)

エピローグとして、この世界選の経歴を簡単に説明すると。ハイ・バイシクル世界選手権大会は、公式なものではなく、はじめは各国にあるクラシック自転車愛好家達により、別々に行なわれていた。その後、だんだん交流が深まりいっしょに行なうようになったもので、まだその歴史に浅い。
名古屋の八神史郎氏の調査によれば、次のとおりである。これは、八神氏がオルガナイザーである英国の J・ピンカートン氏から直接聴取したものである。

第1回 1987年6月、オランダ、ナイメへン市。
第2回 1988年2月、オーストラリア(建国二百年を記念して、タスマニア島のイバンダルで実施)
第3回 1988年5月、フランス。
第4回 1989年9月22日~9月24日 名古屋市。

以上

ずらりと並んだんオーディナリー